*ショタ主 *隠れMなカタクリ *スパンキング 大切に大切に、輝く笑顔が曇らないよう愛を注がれて育てられてきた。幼いとはいえ海賊、悪名高きビッグマムの息子なので世界には悪辣なものや恐ろしいものやたくさんあることは知っていたが、年の近い兄弟が比較的穏やかな性格であることや四皇の息子という肩書きのおかげで家族以外の人間に蔑ろにされた経験がないのもあいまって悪意らしい悪意を経験したことが未だになかった。いわゆる箱入りというやつだ。 だからこそはじめての、それも一等━━本来であれば母に対して抱くような、その存在が世界のすべてだと思うほど━━信頼している兄カタクリの裏切り行為にアルバはとんでもない衝撃を受けた。 アルバはカタクリのことが好きだった。何度も何度も好きだと伝え、結婚してと言ったら苦笑しつつも「大きくなったら」と頷いてもらえた。みんなの噂通り背中をつけては眠らないようで、一緒に寝そべってはくれないけれど、それでもお願いしたら一緒のベッドで眠ってもらえた。大きな手で目隠しされながらおやすみのキスだって。 それなのにカタクリは眠りに落ちた口で「好き」だと言った。小さな声でアルバ以外の名前を呼んで、続け様に好きだと確かに言ったのだ。 子供の戯言だと甘くみていたのかもしれない。けれどアルバは本気だった。軽んじられたくはなかった。悲しいけれど、好きな人がいるならしっかり断ってほしかった。それとも自分の告白の後に好きな人ができた?ありえない。そんなの浮気だ。どちらにしてもひどすぎる。約束しておいて裏切るなんてあんまりじゃないか。 ぐるぐる考えるうちに悲しさと憤りが入り混じり、眠りながらもその感情の動きを感じとったのかカタクリの瞼がぴくりと動いた。 「……カタクリ兄さま、起きて」 「、どうしたアルバ」 「いいからそこに手ついて」 幼い弟相手でよほど油断しているのだろう。寝起きでぼんやりしているカタクリは言われるがままにベッドに手をつき、そこでようやく先を見たのかぎょっとしたように振り向こうとした。が、遅い。その行動を制するようにズボンを引き下げ露わになった素肌に向けて手を振り上げる。 「防御しないで」 「っう」 覇気の使えない自分の手ではカタクリを傷つけることなんて当然できない。それでもカタクリの意思が関わっているのか小さな手に打たれた尻には衝撃が広がり、火照ったような赤みが灯った。 「アルバ、なにを、っ」 「おしおきだよ」 「兄さまが悪いんだから逃げちゃだめ」と厳しい口調で言えば、戸惑う様子に反して体からは素直に力が抜ける。パシン、パシンと軽い音が鳴るたびに屈強な体が小さくビクついて吐息のような声が漏れ、叩いている側であるアルバの息が上がりはじめるころには尻は満遍なく赤く染まっていた。 「……満足したか?」 痛みはなくても羞恥で気力や体力を消耗したのだろう。四つん這いになっていた上体を起こして振り向いたカタクリの顔は打たれた尻と同じように赤くなっていて、息は乱れ、肌はうっすら汗ばんでいる。 裏切られたと思ったときとはまた違う衝撃だった。なんだかとても『いい』と思った。 涙で潤んでいるように見える目に見つめられてなんだか胸がそわそわした。カタクリ兄さまが悪いことをしたおしおきなんだからもっと叩いたっていいんじゃないか。どうせなら本当に泣かせてしまいたい。そんな、傷つけられたしかえしとは違うよくわからない欲が胸の奥から湧いてくる。 「っまてアルバ」 アルバの雰囲気が変わったのを察知したのか慌てたように寝言で好きだと言っていたのはモチモチした食感のドーナツであって決して人名ではないと説明されたが、その説明は一足遅かった。 誤解だとわかってたなら途中で教えてくれればよかったのになぜ一区切りつくまで黙っていたのか。アルバの憤りをおさめるために打たれてもいいという自己犠牲の精神が理由なら続けさせてくれてもいいはずだ。 「そっか。ぼくの勘違いだったんだね。ごめんねカタクリ兄さま」 まだ無防備に剥き出しになったままの熱っぽい尻を優しく撫でる。普通なら謝って終わりの流れだがアルバにそのつもりはない。 信じられないって顔してるけど、兄さまならもう少し前からこうなることわかってたはずだよね?こうならないようにきちんと抵抗しなかったってことは、それはつまり、同意ってことだよね? 「でもぼくまだ満足してないから━━」 もう一度手をついて。 ベッドを指差しながら告げたアルバの言葉とカタクリの喉が鳴る音が重なった。 |