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「それ覇気だな」
「えっ?」

 サカズキ大将に気持ちを伝えてからしばらく、おれの告白に裏がないのか真意を疑うようにこちらを窺うことが増えた大将は視線があってにこりと笑いかけるだけで目に見えて動揺し室内温度を五度ほど引き上げてくれていて、これは存外悪くない方向に意識してもらえているんじゃないかな、尻尾のびゅんびゅんも復活して幸せだなァ、なんて思ってつい気が緩み冗談半分で軍医の友人に尻尾の話をしたら軽い問診のようなことをされたあとサラッとそう告げられた。

「精神的なショックとかストレスがきっかけで使えるようになるやつたまにいるんだよ。感情や心の声が聞こえるってのが主流だけど視覚情報で表れることも稀あるみたいだから、お前のはそれだろ」

 鍛えて使いこなせるようになったら戦闘でも役に立つぞよかったなとなんでもないように喜ばれて、それに対してありがとうと返すこともできないままさまざまな考えが頭の中でごったがえす。
 見聞色の覇気。視覚情報での感情の読み取り。大将の尻尾。
 まさかありえないだろう。和菓子屋の彼女のときの二の舞にならないように都合のいいものだけを見て恋をするのはやめようと努めていたのに、その都合のいいものが真実だなんてそれこそ都合がよすぎる話だ。 いや、でも。もしそれが本当だったらそれは、もしかしてなんでもないどころかとんでもないことなんじゃないんだろうか。

「なあおれいまどんな顔してる……?」
「尻尾があったら振ってそうな顔」

 友人のふざけた答えでぽんと頭に大将の顔が思い浮かんだ。
 びゅんびゅんと大きく左右に尻尾を振るサカズキ大将と同じとは、それはなんとも、可愛い顔だ。