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扉を開くと案の定というか待ち構えるようにサッチ隊長がこちらを見ていてそこまで心配かと苦笑が漏れた。

「どうだった、仲直りできたか?」
「仲直りって……そもそも喧嘩してたわけじゃないんですから」

そうだ、喧嘩をしたわけじゃない。
おれとエースは喧嘩ができる仲ですらなかった。
全部おれの独りよがりで、だから、直す仲なんて最初からありはしないのだ。

「大丈夫ですよ。これからはちゃんと普通にできます」

朝会ったらおはよう。
目があったら笑って手を上げて当たり障りのないことを話して、夜はおやすみ。
それだけやれば充分『普通』だろう。
それ以上はきっと、余計なことだ。

「じゃあな、エース隊長。目、ちゃんと冷やしとけよ」

ひらひらと手を振って二度と来ることはないであろうエースの部屋を後にする。
ベッドの上から背中を刺してくる視線は気づかないふりで、振り返らず、普通に、普通に、普通に。



ーー頭を撫でてやりたかった。
自分のせいだとわかっているけれど、慰めて甘やかして元気付けてやりたくなった。
わかっている。
わかっていた。
だから最初にきっぱりと関わりを断つ道を選んだのだ。

「……しんどいなァ」

一等特別なものを目の前に映しながら普通に扱うのは、関わらないより何百倍も難しい。