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おかしな夢を見た。
煙になったまま元に戻ることができず、ゆらゆらとあたりを漂う夢だ。
そんなのことは悪魔の実を食べてすぐの能力に不慣れなころならいざしらず、訓練を重ね能力を完全に使いこなしている今ではありえない。
けれど夢の中の自分はなぜかその現象を当然のものとして理解し、受け入れていた。
確か『ロギアの能力は強力な反面非常に不安定で常に他者から人間であることを認識されていないと徐々に肉体を保てなくなり最後には自然のひとつとして世界に溶け込み消えて無くなってしまう』という『設定』だったか。
自分にしては珍しくなかなか想像力豊かな、手の込んだ夢である。
夢の中のスモーカーは『設定』に沿ってじわじわと散っていく身体を動かし周囲の人間に気づけと、おれはここにいると必死になって訴えたがいくら叫んでも声は出ないし触れようにも煙の体ではすり抜けるばかりで、誰も彼も煙たそうに咳き込み手で払うだけでその煙が人間であると認識することはなく、じわじわと自分がなくなっていく不安と焦りに絶望しかけていた。
聞き慣れた声が響いたのは視界すら薄れ、がむしゃらに手を伸ばしたそのときだ。


「あれェ?スモーカーじゃん。なにやってんの?」


いつも通り能天気な声でスモーカーの名前を呼んだアルバはもがくように伸ばした腕をひょいと掴むと見る間に散り散りになって薄くなった煙をかき集め、ぺたぺたと、まるで粘土細工でもつくるような手つきでもってそれを人間の身体に戻していった。
先程までの、自分がなくなっていくあの恐ろしい感覚は一体なんだったのかと思うほど簡単に形成されていく自分の体。
最終的にスモーカーのおっぱいはもっと大きかったはずだ煙が足りない集めてくるとどこかへ駆けて行ったアルバのアホさ加減は我ながらリアルなもので、目が覚めた直後に見た間抜け面も合わせて脱力感が半端ではなかった。

「あ、起きた。おはよースモーカー」
「…………はぁ…」
「えっなに?起きざまに人の顔見てため息つくとか酷くない?」

そういうことするとおっぱいもんじゃうぞー、などとふざけた台詞を吐きながらぺたぺたと触れてくる手が心地よく感じるのは、きっと疲れているせいだろう。