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どうしたんだと尋ねた途端『おれたち隠しごとしてます』と言わんばかりの慌てっぷりで口をつぐんだ三人には早々に見切りをつけることにした。
誰か説明してくれそうな奴は、とあたりを見渡す。
と、目の前で大きく振られるシャチの両手。

「気にすんな!大したことじゃねェから!気にすんな!!」
「お前その態度でさァ、本気で誤魔化せるとか思ってんの?おれのこと馬鹿にしてない?」

例え鈍感だとしても、そんなんでそうかそうかって納得するほど頭弱くねェぞおれは。
必死に視界を遮ろうとするシャチの顔面を掌で抑え込んで低く囁くとおれが怒ったと思ったのか両手は急速に勢いを失い、胸の前でハンズアップする形に収まった。
ちょろいな、シャチ。

「そんなつもりじゃなくて、その……わりィ」
「悪いと思ってるならどういうことか教えてくれ」

うっ、と言葉を詰まらせるシャチにペンギンとジャンバールが思いっきりバツマークをつくって指示してくる。
つーかペンギンはともかくクルーになってまだ日の浅いジャンバールまで事情を把握してるっぽいのはなんでだ。
ガチでおれだけハブにされてる感じ?

「キャプテンが『余計なこと言うな』って命令してるんだよ」
「……キャプテンが?」
「ベポ!」
「馬鹿!」
「なぜ今それを!」

キャプテンが、余計なこと、言うなって。
突然耳に入った音を脳内で反芻するも意味は一つしか考えられない。
少し離れた所から様子を窺っていたベポの言葉とそれに続く三人のセリフで疑問が確信に変わった。
ああ、やっぱり、船長が、へェ。
新入りにまで周知徹底しておれ一人に情報を漏らさないようにするなんて本当に絶望的だな。
今までの会話から考えるなら隠されている情報は、船長がおれをどう思っているか、だ。
嫌われてるんじゃなければ、憎まれてるか、いっそ殺してやりたいと思われてるとか。
どっちにしろロクでもない。
船を降ろされないことに実力だけでも認められてるなんて安心してたおれが馬鹿だった。
もう涙すら出ねェわ。

あまりの事実に色々な気力がなくなって立ちつくしているとベポがひょいひょいとふわふわの手で手招きしてきた。
素直に近づくと反応する間もなく両肉球で頬を挟まれて困惑する。
なにこれ噛まれる?おれ捕食されちゃうの?

「ベポ、お前は口の周り真っ赤にするなら血よりもミートソースとかのが似合ってて可愛いと思うぞ」
「あのね、ふざけないで聞いてほしいんだけど」
「いてェ!ごめんなさいふざけないからやめて!」

キリッとした顔でモグモグ回避しようとしたらベポの爪が耳の手前に食い込んだ。
熊爪ヤバい超痛い。
真面目にしてると地の底までテンションが落ち込みそうだからわざとおちゃらけて現実逃避してるのに、ベポはおれに優しくない。
とりあえず黙ってじっとつぶらな瞳を見つめていると、ベポがゆっくりと口を開いた。

「いますぐキャプテンのこと撫でてきて」
「……はい?」

………………はい?