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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「終わったら報告しろ」

そう言って己を送り出したドフラミンゴに半ば処刑台へ上るような気分で一歩、また一歩と重い足を引きずりアルバの部屋の前へ辿り着いたグラディウスは、室内に確かに存在する慣れた気配にぎゅっと唇を噛み締めた。
先延ばしにしたところで問題は解決しない。
報告を求められている以上ドフラミンゴを待たせないよう迅速に命令を遂行すべきだ。
そうわかってはいてもいなければいいと思わずにはいられなかった。
アルバが素っ気なくなり、敬愛するドフラミンゴから背中を押され、しかしこの期に及んでもまだグラディウスは腹をくくれずにいる。

「アルバ、入るぞ」

扉の前に立ち意味もなく手を開閉させ、そうしてドアノブに手をかけるまでにたっぷり数分を要したのはアルバに招かれたわけでもない自分がどうやって扉を開けばいいのか勝手がわからなくなってしまったせいだ。
結局無難に声をかけはしたもののグラディウスを部屋に招くため淑女をエスコートするように扉を開くアルバがいない違和感は拭いきれず、返ってこない返事に漠然とした不安を感じながらゆっくりと足を踏み入れる。
前回訪れたときと変わらない殺風景な部屋の中、アルバの姿は探すまでもなくすぐに見つかった。
ケットも被らず簡素なベッドに転がっているアルバはどうやらすっかり寝入ってしまっているようで、グラディウスが傍らに立っても全く起きる気配がない。
口を半開きにした間抜けな寝顔に、ほんの少しだが肩の力が抜けた。

「……おい、起きろ」

体裁を取り繕うようにそう口にしたがその声はどこまでも小さく掠れていて、まるで『起こさなければならないが起きてほしくない』という葛藤が形になったようだ。
おい、と何度か囁くような声をかけ、目を覚まさないことに安堵して黙り込む。
そうやってアルバが起きないのだから仕方がないと言い訳をしてじっと寝顔を見つめていると、ふと中途半端に伸びた髪が乱れているのが目についた。
しばらくの硬直ののちそろりと手を伸ばして触れてみてもアルバは口元をむぐつかせるだけで目覚めることはない。
ならばと手袋を外して再度慎重に、そろそろと指を差し込んだアルバの髪は己とは比べ物にならないほど滑らかで柔らかかった。
いつまでも触っていたくなるような心地いい感触。
食事のあとにアルバが若の髪を猫毛だと言っていたが、若の髪もこんな触り心地だったのだろうか。
もし自分の髪もこんなふうだったなら、アルバはまだ自分に触れたいと思ってくれていただろうか。

そんなことを考えて目の奥が熱くなるのを堪えようとしていたグラディウスは、直後アルバの瞼がぴくりと動いたことに気が付くことができなかった。






「――もしかして、おれの告白受けたのも若の命令があったからとか?」


勇気を出して初めて自ら伸ばした手を御義理のように扱われ、恋人になった経緯にすらグラディウスの意志が存在していないかのような疑いをかけられ。
構えていたのとはまったく違う方向から不意打ちの攻撃を食らったような衝撃に、元々頑丈にはできていないグラディウスの感情の糸はぷつりと音を立て、それはそれは簡単に切れてしまったのだった。