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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -

グラディウスは戸惑っている。
自身の恋人であるアルバについてだ。
アルバは過剰というほどではないがどちらかといえばスキンシップを好む男であり、周囲に目があるときは別としても二人きりになれば子供の悪戯のようにグラディウスの髪を乱し、額に唇を寄せてくるのが常だった。
戯れるようなそれらがぱたりと行われなくなったのはつい最近のこと。
なぜかはわからない。
アルバがドフラミンゴから言い渡された単独任務に暫しの別れを告げることもなく出て行って、それまで頻繁だった電伝虫での連絡すら一度もせずに帰ってきたと思ったら『そう』なっていたのだ。
予定より遅れて帰還したアルバとばったり鉢合わせたあの日も『そう』だった。
トレーニングで汗をかいたから、汚れてしまったから仕方なくだと自分に言い訳しつつ急いでシャワーを浴びて潜むようにじっと待っていてもアルバが部屋を訪ねてくることはなく、食事の前に偶然を装って顔を合わせても石鹸の匂いに反応して「きれい好きだなァ」と笑うだけ。
髪が濡れているのだから毒が洗い流されていることくらいわかるだろうにキスどころかこちらにむけて手を伸ばす気配すらないアルバに機嫌を悪くしながらも、そのときはまだこんな日もあるかと軽く考えていた。
しかし翌日も、その翌日も、更にまた翌日もアルバがグラディウスに触れようとしなかった。
それどころかこのところは部屋を訪ねてくる回数すらあきらかに少なくなっていて、薮蛇を恐れて何故と問うこともできないまま違和感がじりじりと心臓を焦がしていく。
いつも慣れようのない羞恥心からスキンシップに抵抗すると「好きな子に触りたくなるのは当然だろ?」と常識を説くように話していたアルバ。
ならばどうして今、グラディウスに触れようとしないのか。
理解できない。
できるはずがない。
目の前に転がっている至極簡単でありきたりな答えに気づかないふりをして、グラディウスは今日も戸惑い続けている。
じとりと睨んだ鏡の中には触り心地などいいはずもない硬すぎる髪を逆立たせた男が一人、何かを詰るような目でこちらを睨み返していた。