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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「お前またあの店の饅頭買ってきたんだって?朝開店するの待ってたら遅刻するだろうし帰るころにはもう売り切れてるだろうに、毎回毎回どうやって手に入れてんだ?」「まあ、ちょっとな。店員に知り合いがいて融通してくれるんだよ」「そうそう、こいつ昔あそこの看板娘ちゃんと付き合ってたんだぜー?」「看板娘ちゃんって……あの美人か!?ええっ、嘘だろ似合わねェ!」「うっせェ、昔の話だ。つーかあいつももう娘って歳じゃねェだろ」「あいつとか!親しげだなァおい!」「熱心に通ってるみたいだし、まさかの元サヤか?」「寝ぼけたこと言ってないで仕事しろバァカ」


ぴくりと動いた耳が意識する間もなく拾い上げた声。
頭の中を占拠する存在が程近い場所にいることを示すそれに、しかし、当人は生えているとすら知らない尻尾がいつものように音を立てて揺れることはなかった。
だから男は気づかない。
強張った尻尾にも、悲痛の滲む表情にも。

男は何も気づかない。