「おーベポ、昼寝か?」 「うん、今日はいい天気だから」 そうかそうかと笑って鼻筋を撫でる手が気持ちいい。 うっすらと目を開けると屈みこんだ足が見えた。 「足返してもらえたんだ、よかったね」 「おう、今回はわりと早かったわ。かわりにシャチが腹パンもらってたけど」 シャチのやつ船長になにしたんだろうな、なんて自身の行動を顧みない鈍感加減にちょっと呆れてしまう。 シャチが船長になにかしたんじゃなくて、きみがシャチにしたことにキャプテンは嫉妬したんじゃない? おれは白クマだし人間の機微に詳しいわけじゃないけどたぶん、それが正解。 「……ねえ、キャプテンのことは撫でないの?」 荒くはないがそこそこ強い力で毛並みを整えるように動く手は、きっと人間だって不快には感じないだろう。 キャプテンなら尚更。 そう思って尋ねてみれば返ってくるのは寂しそうな、諦めたような笑みで。 「キャプテンにこんなことしたら今度は手がなくなっちまうよ」 おれは船長に嫌われてるからなァ。 船内に戻る背中にため息をつく。 嫌われてるなんてそんなわけないんだから、やっぱりキャプテンを撫でてくればいいのに。 |