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静まり返ったプールサイドを大股で突っ切って人気のない方へ進んでいく若と、そんな若の後ろを小走りで追う俺。
追うっていうか追わされてるって方が正しいんだけどね。
いま俺の身体の制御権俺にないからね。
いつもは操るにしてももう少し自由があるんだけど、今回は首の動きすら制限されてるせいで周りが全然見えない。
若の広い背中を隠すだぼっとした上着とチラリズムピンクビキニと毛の薄い裏腿とつるつるなひざ裏とすね毛なふくらはぎとキュッと締まった足首とそこに浮くしっかりしたアキレス腱と交互に足が浮く瞬間覗く傷だらけの足裏しか見えない。
つまり、ある意味最高の景観だ。

「……ていうか若、どうしたんすか急に。なんかありましたー?」

あんなにご機嫌にプールサイドをエンジョイしてたのに俺が離れた僅かな隙に一体何があったというのか。
何があったとしてもその場にいなかった俺のせいとは思えないし、八つ当たりはやめてほしいんだけどなー。
そんなことを考えながら軽く眉を寄せていると質問を無視してずんずん歩き続けていた若が、覇気で探る限り周囲に誰もいない王宮の裏手でピタリと足を止めた。
その場に跪かされた俺を振り返った若の表情はといえばさっきと同じくいかにも「キレてます!」といった様相だ。
額に青筋の浮いた真顔の若の前に跪かされるとか、控えめに言っても殺される気しかしない。

「あのー……わ、ふぁっ!?」

殺すにしてもせめて理由を、と口を開けた瞬間、上下の歯の隙間を抉じ開けるように何かが突っ込まれた。
何かっていうかつま先だ。
紛うこと無き若のつま先だ。
え、なにこれご褒美?処刑じゃなかったの?
状況が全くわからない。
わからないが、とりあえず若の気が変わらないうちに口の中のごちそうをいただこうと心の中で感謝しながらねっとりと指に舌を絡める。
親指の側面、爪の間、指の股。
輪郭をなぞるように舌を這わせ、舐めてしゃぶって擽って赤ん坊がミルクを飲む時みたいに指にじゅうっと吸い付けば、若の足がぴくりと震え、身体に自由が戻った。
手が動くのはいいことだ。
若は内腿舐めながら足の裏を爪で掻かれるのが大好きだから、いっぱい舐めてカリカリして啼かせて堪能してやろう。

「ッ待て、おい、止まれ!」

ここぞとばかりに足首を掴み愛撫する範囲を広げようと動く。
と、頭上から水を差すように若の制止の声が聞こえた。

……あー、まあ、ね。
若がその気になったときだけってお約束でしたもんね。
若はおれで遊んでるだけでその気なんてこれっぽっちもないんですもんね。
わかってましたよわかってましたけどでもここまで来てまたおあずけはちょっと酷すぎやしませんか若が楽しいならいいですけど俺にだって我慢の限界はありますよ襲いますよいい加減にしてくださいよ若。

「若、その気がない癖に煽るのはーーえっ?」
「……ッ」

顔を歪ませて恨みがましく見上げた先には上着の裾を引っ張ってビキニを隠そうとしている若の姿。
そして努力の甲斐なく隠しきれていない、布からはみ出したソレ。
時間が止まったようにまじまじ見つめる俺に、日焼けで赤らんだ若の肌が更に深く赤に染まる。

「若、それ……その気になったってことでいいんです、よね?」
「これ、は、違う、お前のせいで、」
「俺のせいで、その気になっちゃったんでしょ?なら触っていいんですよね?約束ですもんね?」

明らかにエロい気分になっている若に、この機を逃してたまるかと必死になって言い募る。
言いながら揉むように足の付け根をなぞると薄い布一枚隔てたそこが肯定するようにぴくぴく動いたのがわかり、俺は少し泣きそうに見える若に向けて笑顔で「いただきます」を告げた。