「あっシャチ!よかった頼む部屋まで運んでくれ!」 船内を歩いていると目の前から上半身をズルズル引きずる男の姿。 めちゃくちゃホラーな光景なはずなのにもう見慣れてしまってなんとも思わない。 屈み込んで視線を合わせると顔が煤だらけだった。 掃除はこまめにしてるはずなんけどなァ。 「今回はなにやらかしたんだ?」 「船長にボロクソ言われたから気ィ回して船降りましょうかって聞いたらバラされた。おれ悪くなくね?」 なるほど、通常運行だな。 毎度毎度船から降りる意思を見せるたび足を奪われるくせに、なんで気づかないんだろうこいつ。 「ほんっと乗る船間違えたわ。船長なに考えてんのか全然わかんねェし怖い……ああシャチは優しいな大好きだよありがとう」 這いずる間にトゲが刺さったらしい血まみれの手を見兼ねて抱えてやると頬にキスされた。 キメェしウゼェし船長見てるし……うっわやべェ船長に見られたヤバいヤバい顔が怖い顔が! |