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「#幼馴染」のBL小説を読む
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自分にしか見えていない幻覚よりサカズキ大将本人の意見を優先しようと思い立ち、すっかり下がりきっている好感度のリセットに乗り出して一週間。
罪悪感がやばい。
どうしてって、あの尻尾だ。
机や大将自身が遮蔽物になって隠れていることが多いため積極的に見ようとしない限りは気にならないと思っていたのに、ここにきて突然おれの幻覚に幻聴が追加されたのである。
どうやら幻聴には距離も空間の隔たりも関係ないらしく、今日もまた執務室にいる大将と窓越しに目が合うと同時に尻尾の音が聞こえ始めた。

ぱたぱた、ぱたぱたぱた、ぱたぱた、ぱた…

ぱた……

いつも通り数秒の間に徐々に勢いを失っていき、目を逸らす段階で完全に沈黙した尻尾の音にひっそりとため息を漏らす。
所詮幻覚、所詮幻聴。
そう理解しているのに大将と目が合うたびあのしょんぼりと寂しそうに垂れ下がった尻尾が頭をよぎってしまい、居た堪れないったらない。
唯一の救いはサカズキ大将の厳めしい表情に変化がないこと……だったのだが、最近はそれすらどこか憂いを帯びているように見えるものだからいよいよもって逃げ場がなくなってきた。
おれに都合のいい幻ならどうして元気にびゅんびゅんしていてくれないのか。
もう胃に穴が開きそうだ。
犬尻尾が可愛すぎて、可哀想で、つらい。