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「そうですか……じゃあ、おれのことは?」

まるで世間話でもしているような穏やかさでもってそう問いかけてくるアルバ。
甘い菓子、熱くて渋みのある茶、海を思わせる香水の匂いに、事務的でない少し砕けた喋り方。
好きかと尋ねられては間違っても本音とは言えない答えを返し続けた質問の最後に己の核心を突かれ、サカズキは顔を強張らせた。
サカズキはアルバが苦手だ。
以前はそうでもなかったはずなのに、今となってはサカズキの何もかも見透かしているようなアルバの傍にいると気が落ち着かなくてしょうがない。
ただ落ち着かなさの理由の一つであるむず痒い高揚感は嫌悪や憎しみといった己に馴染んだ感情とは似ても似つかないもので、その意味に気づいたサカズキは呆然とした後すぐさま自分を戒めた。
知ればきっと不快に思われてしまう。
だからこの想いだけは何があっても隠し通さなければならない、と。

「……好かれとると思うちょるんか」

感情は目に見えるものではない。
たとえ見透かされていたとしても、口にさえしなければ事実にはならない。
そう考え、努めて冷静に吐きだした答えにアルバが笑った。
いつもの柔らかい微笑みとは違う、苦い笑みだ。

「おかしなことを聞いて申し訳ありませんでした。では、自分は仕事に戻ります」

普段より声が硬い気がして心臓が竦む。
酷く嫌な予感がした。