「嫌いだというならおれに構わなければいいだろう!おれだって嫌いだ!二度と話しかけるな!お前なんか、顔も見たくない!」 ビリビリと空気が揺れるような大声でそう叫んだモモンガにおれは何も言い返すことができなかった。 おれのモモンガに対する「嫌い」は、例えば話しかけて素っ気なくされたときだとか、他の奴にばかり構っているときだとかに拗ねて言っていたもので、つまりモモンガのことが好きだからこそおれを見てくれないモモンガは嫌いだという一種の愛情表現だったのだが。 モモンガの「嫌い」は。 おれは。 おれは、モモンガに嫌われていたのか。 普段の態度から鬱陶しがられているのはわかっていたけれど面と向かって切り捨てられるほど嫌われているとは思っていなかったので上手いこと頭が回らない。 沈黙の中、激昂したモモンガの荒い呼吸の音に行動を急かされる。 「あ、の……ごめん、モモンガ」 とにかく何か言わなくてはと混乱したまま何に対してかもわからない謝罪を告げるとモモンガは肩を震わせてジリ、と足を後ろに運び、逃げるようにその場から走り去っていった。 あっという間に小さくなっていく後ろ姿をいくら見つめても現実は変わらない。 馬鹿馬鹿しいほどに呆気なく、おれとモモンガの関係が終った瞬間だった。 |