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「#幼馴染」のBL小説を読む
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兄弟たちと騒ぐのは楽しいし孤独は恐ろしいものだと知っているのにときどき波の音しか聞こえない静かな場所で一人きりになりたいと思うことがある。
以前ぽつりとそう漏らしたおれに、サッチ隊長は少しばかり思案した後「お前は周りに気を遣いすぎて色々溜め込むタイプだろうからなァ」とこの場所を教えてくれた。
ガラクタが積まれていた場所をみんなに内緒で片付けたのだという喧騒から遠く日当りのいい、こじんまりとした秘密の空間。

「おれのとっておきなんだから誰にも言うんじゃねェぞ」

そんなふうに笑って『とっておき』を教えてしまうサッチ隊長こそ周りに気を遣いすぎなんじゃないかと常々思ってはいたが。
まったく、サッチ隊長のお節介焼きめ。

「アルバ……!」

サッチ隊長しか知らないはずの部屋の中でバタバタと廊下を駆けてくる足音を聞き「この辺りに近づくやつがいるなんて珍しいな」とぼんやり考えていたら突然乱暴に開け放たれた木製の扉。
その向こうにはおれが今最も会いたくて、会いたくない人物が息を切らしながら立っていた。
荒い息の合間を縫って絞り出された掠れ声に心臓が跳ねる。
諦めたくせに我ながら情けなくなる反応だがまさかもう一度、それもこんなに早く名前を呼ばれる日が来るとは思わなかったのだから仕方あるまい。

「アルバ、あ、あの、あのっ」

明らかにおれを探していた様子のエースが何かを話しあぐねて魚のように何度も口をパクつかせている。
ここに来たということはサッチ隊長に何か言われたのだろう。
もういいと言ったのが強がりにとられてしまったのかもしれない。
追及されなかったからと油断しないでもっときちんとクギを刺しておくべきだったか。

「落ち着けよエース隊長、何かあったのか?」

動揺を隠そうと努めたせいで妙に平坦になってしまった声を微笑みで誤魔化しゆっくり話すよう促すとエースがヒュッと喉を詰まらせたように呼吸を止めた。
先程まで酸素を取り入れようと必死だったはずの身体が、まるでその方法を忘れてしまったかのごとく沈黙し続けている。

「……エース隊長?」
「あ……なん、その呼び方、なんで」

どうしたんだと眉を寄せるおれを見て中途半端に開いた唇が震え、おれにとっては重要だがエースにとってはそうでもないであろう疑問が零れた。
おれの場合ケジメをつけようと思っただけだが末の弟でありながら隊長になったエースをからかい半分尊敬半分で「エース隊長」と呼ぶ家族は少なくない。
古株のティーチですらそう呼ぶのだからおれが呼んでおかしいことはないだろうに何をそこまで不思議がるんだ。

「……ん?その袋」
「ッ!」

首を傾げて動いた視線の先に赤がよぎり、よくよく見てみるとエースの手には見覚えのある袋が握りしめられていた。
少し焦げて変色した袋は間違いなくあのときのプレゼントだ。
サッチ隊長が渡したんだな。
どうしてもと言うから捨てないで譲ったのに、余計なことを。

「エース隊長、それ、……えっ?」

もしかしておれと同じようにケジメをつけるため正面からプレゼントを突き返しに来たんだろうか。
そう考えて痛む胸に顔を歪めながら話しかけた瞬間、エースが怯えたように後ずさり勢いよく身をひるがえした。
唖然とする間にどんどん足音が遠ざかっていき、波の音だけが部屋に残る。

「……ええ?」

肩透かし感が半端ない。
お前、なにしに来たんだよ、エース。