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アルバがあわや海賊に命を絶たれそうになるその瞬間に至るまでサカズキとアルバの間に特別な関係はなかった。
当然のことだ。
アルバはそれなりに強かったがサカズキはそれ以上にとびぬけて強かったし、なにより性格や思想が違い過ぎた。
海賊を屠ることだけに執心するサカズキと海賊の殲滅よりその日の晩飯のカレーに肉が多く入っていたことを喜ぶ男で気が合うはずがない。
ただ日々訓練や討伐を共にする中、今日は天気がいいだとか珍しい色の魚を見つけただとかニュース・クーが甲板に降りてきただとか、そんな些事で輝かしい笑みを浮かべるアルバをサカズキが無意識のうちに目で追う回数は少なくなかった。
だから激しい戦闘のなかで『その瞬間』をサカズキが目撃し、目前で逃亡を図ろうとする五人の海賊と少し離れたところでアルバに襲いかかる一人の海賊を天秤にかけた末、先に後者を始末したのはある意味必然だったのだ。
ギラギラと勝利の笑みを浮かべていた海賊が唐突にマグマに焼き尽くされ、唖然としたアルバと視線がかち合う。
なにをやっているんだ、と思った。
それは未だ交戦中にもかかわらず魂を抜かれたようにサカズキを見つめ続けるアルバに対してでもあったし、五人の海賊より一人の海賊を優先して攻撃した自分に対して浮かんだものでもあった。
他のゴミ共を見捨てて小舟で海に逃げようとした五人の海賊は数秒後きっちりマグマの海に沈むことになったので結果としてはアルバの命が救われたぶんいい選択だったのだろう。
しかし、もしかしたら万が一にも逃亡を許してしまう可能性もあった。
先に始末すべきは間違いなくあの五人の方だったのだ。
――なにをやっているんだ。
再度そう考え、アルバの視線から逃げるように海賊の残党を潰していく。
ぐつぐつ、ぐつり。
自身の体がマグマとは別種の、意に沿わぬ熱を持っていることには最後まで気づかないままだった。

***

「サカズキ好きだ!おれと付き合ってくれ!!」

後日そう叫びながら背後から抱き付いてきたアルバを制御しきれぬマグマで焼き殺しかけ、ようやく気づいた自らの異常。
これが後に数十年続くことになった戦いの幕開けである。