アルバの告白を聞いたおれは憤っていた。 互いを所有しなければ恋人ではないと。 アルバはおれのものだが、おれはアルバのものじゃなくて、だからいまの二人の関係は恋人ではないのだと。 そんな戯言を真剣な顔で口にするアルバに殺意すら湧いた。 ふざけるな。 ならこの一年は何だったんだ。 キスもデートもセックスもして「おれのドフィ」なんて甘ったるい呼び方をしておきながら今更何をぬかしやがる。 それに自分も自分だ。 殺してやりたいほど憤っているのに「ドフィの全てが欲しい」と言われただけで胸の奥かムズムズして脳みそが痺れて体に震えが走って求められてるんだとか捨てられてなかったんだとか、違うだろう、馬鹿か、怒れよ、怒ってんだろうが。 そうやって己を叱咤してみても指輪を受け取ったアルバに左手をとられた瞬間思考がぐにゃぐにゃになってしまうのだからやりきれない。 突然素っ気なくなった理由、最初から渡されなかった指輪、足元に散らばっている薔薇の色、問い詰めたいことは山ほどあるのに「そんなことよりも」と心が急かす。 今までの説明なんかより指輪が欲しい。 はやく独占して、束縛して、おれのものだと所有を宣言してほしい。 細胞の一つ一つから滲み出てくるような衝動は、果たしてアルバの手によりすぐさま叶えられることになった。 「誕生日おめでとう……愛してるよ、かわいいおれのドフィ」 左手の薬指、一度関節で引っかかり、そのあとは滑るように収まった金のリング。 確かな言葉とともに贈られたプレゼントに止まっていた涙がまた溢れてきた。 十二時の鐘が響くなか二人で廊下に座り込み、おれにつられたのか少し鼻声になっているアルバに繰り返し「おれのドフィ」と囁かれる。 幸せで幸せで幸せで、それでもまだまだ、全然足りない。 鐘が鳴り終わったら「寒い」と甘えて部屋まで運んでもらおう。 きっと今なら、ベッドの中で温めてもらえるはずだ。 |