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「なれもなにも、おれはずっとお前のものだ」
「フフッ、フッフッフ!嘘はいけねェなアルバ!おれのもの?恋人でもねェのにか?」

ベビー5にそう言ってたじゃねェかと中指に中途半端に引っかかっている指輪を握りしめながらドフィが泣き笑う。
いつものように丸められた背が今は傷ついた身を守るために縮こまっているようにしか見えない。
傷つけたのはおれ。
怯えさせているのもおれ。
でも恋人になれない原因は間違いなくドフィにあるはずで。

「なァ、アルバ。おれのものになれよ」

考えが追い付かず黙り込んだおれに縋るようにして言葉が繰り返される。
笑みに似せて弧を描いただけの震える唇が告げたそれに一体なんと返せばドフィは笑ってくれるのだろう。
もう一度ドフィのものになると誓ってもきっとドフィは信じない。
ただ言質をとって自らに縛ろうとしているだけのドフィに、おれの心は伝わらない。
そもそもドフィがおれを傍に留めようとする理由は何だ。
黄薔薇を投げ捨てて指輪を求めたのは所有物に対する独占欲からか、それとも同じように想ってくれているのか。
わからない。
わからないから、おれはドフィにありのままを伝えることしかできない。

「……おれはお前のことを愛してる。だから一年前お前のものになることを誓った。勿論、その気持ちは今でも変わりない」

そう告げるとドフィの濡れた瞳が一瞬輝き、しかしすぐに構えるように鋭さを増した。
沈黙のまま視線だけで「それならどうして恋人であることを否定したのか」と問いただされる。

「ドフィ、おれにとって恋人になるっていうのはお互いがお互いのものになるっていうことだ。だからドフィがおれのものになってくれない限りおれはドフィの恋人になれないんだよ」

ベビー5はドフィがおれの浮気を疑っていたと言っていた。
ドフィはおれのものじゃないけれど少なくとも付き合っていると思ってくれていたのだ。
しかしそれだけでは駄目だ。
おれはドフィと恋人になりたい。
おれの全てを捧げるかわりにドフィの全てが欲しい。
そんな、自分ですら叶わなくて当然と思い続けていた強欲な願いを聞いてドフィが心底驚いたように眼を瞬かせた。
愛称で呼んだことを咎めもせずギュッと唇を引き結んで俯いたかと思うと、おれのほうを見てもごもごと口を動かす。
明らかに様子が変わったドフィと視線がぶつかり、密かに喉が鳴った。

「……恋人になったら、また呼ぶのか」
「うん?」
「また、おれのドフィって呼ぶのか」
「ああ……そうだな。ドフィが許してくれるならそう呼びたいな」

おれのドフィ。
そう話しかけても否定されることなく幸せそうな表情を見せてくれたらどんなに素晴らしいだろう。
さっき寝ぼけていたときのドフィは本当に可愛かったと思い出して微笑んでいるとドフィは何かを堪えるようにぐうと全身に力を込め、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「…………アルバが呼びたいってんなら、呼ばせてやってもいい」
「いや、不快なら無理する必要は、」
「うるせェ馬鹿!お前のもんになってやるって言ってんだ!馬鹿!バァカ!!」

自棄になったように子供じみた罵声を浴びせかけるドフィの声はここ最近聞いた中で一番生気に満ちている気がした。
ギチギチに嵌っていた指輪を無理やり抜き取って押し付けてきたドフィに、ようやく歯車が噛み合ったように脳が働き始める。

「やりなおせ」

左手を差し出し不機嫌そうに言い放ったドフィの顔が、不意にじわりと滲んだ。