ドフィの誕生日当日。 本当なら時計の針が十二時を回ると同時におめでとうを告げてプレゼントを渡したかった。 だが愛称を呼ぶことを禁じられ、ドフィの一日の始まりにすら立ち会えなくなったおれにそんなことができるわけがない。 用意したプレゼントだってきっと受け取ってはもらえないだろう。 なにせ指輪だ。 恋人でもない、親しくするつもりもないと突き放した相手からよりによって指輪を貰うなんて気色悪いに決まっている。 仕方なくプレゼントのことは後回しにして、せめて祝いの言葉だけでもと探し回るが肝心のドフィが見つからない。 いくら城の中が広いとはいえそのすべてがドフィの行動範囲というわけではないのだから居場所なんて限られているはずで、現に他の連中はもうとっくに顔をあわせてプレゼントを渡したと言っていたのに。 「……おれは、避けられているのか」 ぽつりと声を漏らすと近くにいたベビー5が複雑そうな表情でこちらを見た。 否定がないということはつまり、そういうことだ。 不思議なことにドフィに避けられていると知っても、おれは冷静だった。 衝撃が大きすぎて感情がマヒしているのかもしれない。 夜にはファミリーの主要人物たちが集まって開く宴がある。 おれも参加する予定だったけれど、もし万が一おれのせいでドフィが来ないなんてことになったら大変だ。 ドフィのための宴なのにその主役が楽しめないんじゃ意味がない。 「ベビー5、おれは宴を欠席する。しばらく街に出るから若に会ったらそう伝えてくれ」 ベビー5は何か言いたそうにしていたが、最終的にはドフィを優先することに決めたのか躊躇いがちに頷いた。 モーニングコールを断られて以来ドフィに「お前はもう要らない」と言われたらどうしようと怯えていたが答えは案外簡単なようだ。 軽々しく会話できなくても、笑顔を向けてもらえなくなったとしても。 ドフィのものでいられなくなったとしても、おれはドフィが幸せなら、それで。 |