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ドフィのことを若と呼ぶようになっても続いている毎日のモーニングコール。
たった一カ月も経たないうちに随分と変わってしまったおれとドフィの間では今やそれだけが唯一の繋がりといっても過言ではないほどだ。
だからおれは今日もまた朝日が差し込む部屋、天蓋のついたベッドの前に立つ。
前のものとは意匠が異なるけれど同じくらい立派で大きなベッド。
おれがこのベッドに呼ばれることはこのさき一生ないのかもしれない。
今はもうゴミとして処分されているであろうあの壊れたベッドでの交わりは、もしかすると暗におれとの関係を終わらせるということを伝えたかったのだろうか。
そんなふうに悪い方へ向かう思考を振り払い乾いた唇を舌で湿らせた。
ドフィの一日を暗い声で始まらせるわけにはいかない。

「おはよう、若。もう起きる時間だよ」

手を伸ばすこともキスすることもなく、言葉も必要最低限の感情を交えない朝の挨拶。
ひと月前とは比べ物にならないほど親しさのなくなったそれに自嘲していると声に反応したドフィがゆっくりと目を開きこちらを見つめてきた。
最近の不機嫌さがなりを潜めた穏やかな、けれどなんの感情も見いだせない彫刻めいた表情。
ドフィにしては珍しいその表情に気を取られていると「なァ、」と寝起き特有のざらついた声がおれに向けられた。

「アルバ、お前はおれのものだろう」

疑問とも断定ともつかない言葉に、それでも答えは変わらないとすぐさま肯定を返す。
するとドフィはそうかそうか、と楽しそうにくつくつ喉を鳴らし、ごろりと背を向けた。

「しばらく起こしにこなくていい」
「……若?」
「すぐに起きるから、出ていけ」

最後通告に従い何も考えられない頭でふらふらと部屋を後にする。
耳鳴りの響くなか「うそつき」という微かな声が聞こえた気がした。