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ドフィにドフィと呼ぶことを禁じられて数日。
もし抵抗すれば「話しかけるな」や「近寄るな」など一層厳しいことを言われるんじゃないかと思い素直に従ったが、心の中は今までにないほど暗澹としていた。
なぜ急にそんなことを言われたのか見当がつかないけれど、どうやらドフィは本気でおれにそう呼ばれることが我慢ならないらしい。
なにせ他人との会話の中で「おれのマグカップ知らないか」とか「おれのぶんの食事も残しておいてくれ」とか口にするだけで過敏に反応してこちらを睨んでくるのだ。
嫌がられていることを知りながら『おれのドフィ』なんて大それたこと言えるはずがないのに。
そんなことを考えながら庭でぼうっとしていると、生垣の向こうを歩いていたベビー5がおれを見て怒りの形相でツカツカと寄ってきた。

「ちょっとアルバ、あなたいい加減にしなさいよ」
「いきなりどうしたんだ、ベビー5」
「いきなりじゃないわ!何が理由で喧嘩してるのか知らないけど、いくらなんでも若様がかわいそうじゃない」

怒りを露に迫ってくるベビー5を両手で制す。
ドフィがかわいそうとはどういうことだ。
どちらかというと現状かわいそうなのはおれのほうだぞ。

「あんなに傷ついてるのにこれ見よがしに若、若って……あなたそれでも恋人なの!?」
「ああ、なるほど……ベビー5、きみは色々と勘違いしてるらしいな」

どうやら恋愛に夢見がちなベビー5のなかでは恋人であるはずのおれがドフィに冷たくしているということになっているらしい。
おれが少し前まで厚かましく恋人面していたせいだといえばそれまでだが、だからといってドフィがおれのせいで傷つくなんてありえないだろうに。

「この呼び方は若から指示されたからだし、おれと若は恋人じゃないよ」
「えっ?でも、それじゃ……」

それ以上説明する気は起らず戸惑ったような声をあげるベビー5を置いてその場を去る。
最悪な現状の再確認なんて拷問でしかない。
沈んでいくばかりの気分を反映した重い足取りで、おれは自室に戻っていった。