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アルバがおれのことを「おれのドフィ」と呼ばなくなってもう何日たっただろう。
おれのドフィ。
アルバだけに許容したその呼び方。
所有物扱いなんてあり得ないことのはずなのにアルバにそう言われるとどうしても悪い気はしなくて、いつも不機嫌を装いながら強請るように耳をそばだてていた。
それなのにここのところアルバはずっと「ドフィ」としかおれを呼ばない。
親密さを表すはずの愛称だが、アルバがそう口にするたび距離をとられているようにしか感じなくてイライラした。
朝だってそうだ。
毎朝毎朝飽きもせず「かわいいかわいい俺のドフィ、今日も素敵な一日がはじまるよ」と気障で甘ったるい台詞を吐き、キスして抱き起してまたキスをして。
それが普通だったくせに最近はただ事務的に起こしにくるだけ。
数日前など朝というには遅すぎる時間まで布団にくるまったままじっと待っていても起こしにすらこなかった。
迷惑か、なんて、どうして今更そんなことを聞いてくるんだ。
迷惑ならとっくにやめさせてるに決まってるだろうが。
どうしようもないほどの苛立ちに任せ滅茶苦茶に切り刻んだ部屋のなか壊れたベッドで半ば強制的に交わったらアルバは心配そうに身体を労わってくれたが、それで多少持ち直した機嫌もそう長くはもたなかった。
アルバと誰かが話しているだけ、ほんの少し触れているのを見ただけで、自分でもおかしいと感じるくらいの怒りや不安が膨れあがるようになったのだ。
アルバはおれのもののはずなのに何故おれを見ない。
なんでおれを放って他の奴らとばかり親しげにしている。
何もかもぶち壊してやりたくなるような衝動を抑え、どうすればアルバがおれのことだけを見るようになるかと考えてふと思い出した。
ドフィという愛称で呼ぶことを許可してやったとき、まるでこの世の春といわんばかりに輝いていたアルバの表情を。
アルバはおれのものでおれを愛しているんだから、それを取りあげると言えば「そんなこと言わないでくれ、おれのドフィ」と泣いて縋ってくるに違いない。
そうして機嫌を取るようにキスをするアルバにおれが「しかたねェな」と笑ってやれば。
そうすればきっと元通りだと、そう思っていたのに。

「……わかったよ――若」

ほんの少し目を見開いただけで、なんの抵抗もせず命令を受け入れたアルバ。
いつもと同じ穏やかな声が鼓膜を震わせ、心臓にぽっかりと穴が開いた気がした。