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「アルバ、お前まだ童貞なんだってなァ?」

いつもより深い笑みを浮かべながらからかうように「おれが筆おろししてやろうか」と囁いた若は、きっとおれのことを暇つぶしのためのオモチャかなにかだと思っているのだろう。
別にそれで構わないと思うのにどうしても胸が痛むのはおれが若に身の程知らずな想いを抱いているからで、上手く返事をできずに逃げてしまったあの日から幾度となく寄越されている寝室への誘いにイエスを返すことができなかったのはその身の程知らずな想いに由来するくだらないプライドゆえだった。
ちなみに『くだらないプライド』とは知識不足で好きな人に幻滅されたくないといういかにも童貞らしい羞恥心と虚栄心である。
我ながら本当にくだらないとは思うがベッドの上で若に嘲笑されたらトラウマになるのは必至だ。
間違いなく一生勃たなくなる。
だから、技術に関してはどうしようもないとはいえ最低限どこをどうすればいいかもわからず狼狽えるのだけは避けたくてこの三カ月必死に勉強しまくった。
酒場の酔っぱらいから聞きかじった知識がどこまで正しいかはわからないがコンドームの付け方もよく理解していなかった頃から比べれば断然マシになったはずで、自信なんて大層なものではないにしろ一歩を踏み出すための覚悟はできた。
つまり、もう愛しい人からの誘いを断る理由などおれには存在しないのだ。

「フッフッフッ!よォアルバ、逃げねェってことはついに楽しませてくれる気になったのか?」
「はい、よろしくお願いします」
「フッフッ、……あ?」

いつも通り楽しげに笑って挑発するようにいやらしくおれの頬を撫でた手を取り、甲とひらに一度ずつキスを落とすと若の笑顔がびしりと固まった。
あんな魅力的な誘惑を繰り返していたくせにおれが乗るのは想定外だったとでもいうのか、逃げるように後ずさろうとする足を腰を抱きよせることで押しとどめる。

「ベッドの前にシャワー、ですよね」

手伝いますよと耳元で囁きながら若の手つきを真似て引き締まった腰を撫であげると戦慄く唇からヒッと小さな悲鳴が漏れた。
童貞にあわせて初心な処女でも演じてくれているのだろうか。
サービスしてもらえるのは嬉しいが興奮しすぎて自制がきかなくなりそうなので、これ以上煽るような真似はやめていただきたい。