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おれはアルバ。
サトサトの実を食べたサトラレ(兼サトリ)人間だ。
世話係として雇われているおれの仕事は当然クロコダイルさんの身の回りの世話をすることであり、あまり細かい気配りができる性格とは言えないため下半身の世話を除く仕事に関しては意に沿わないことをしでかして本気で叱られてばかりなのだが、それでもおれなりにクロコダイルさんが過ごしやすいよう日々努力して仕事に取り組んでいる。
上手く熟せてもクロコダイルさんがおおっぴらに褒めてくれることは少ないけれど多分本人も気づいていないくらい微かに緩む頬だとかを見れば評価してくれているのは一目瞭然ーーあ、やっぱり顔緩んでるの気づいてなかったんですね。
今更表情作ってもかわいいだけですよ。

(サトリの能力を使って本気を出せば世界一優秀な使用人になれる自負はあるものの、この場合手を抜くのも仕事のうちだ。)
(なにせクロコダイルさんがおれに求めているのは『完璧な世話係』ではなく『不出来だが懸命に尽くそうとするアルバ』なので。)
(かわいい。クロコダイルさんかわいい。)

でもまあ、たまには口に出して褒めてもらいたいっていうのも正直なところで、だからさっきクロコダイルさんがおれが今朝用意したばかりの花――先日花瓶を割ってしまってここ数日はなにも飾ることができなかった場所のそれを見つけて「悪くねェ」と言ってくれたときは天にも昇る気持ちだった。
反射的に「ありがとうございます」と返したときの顔からすると無意識だったんだろうな。
ばっちり口に出てたけど。
おれの返事にびっくりして戸惑うクロコダイルさん本当に可愛くてもうどうしてやろうかと思った。
すごく押し倒したくなった。
一回褒められながらセックスしてみたいなァ。
実現は難しいだろうけどオカズにしたら百回はぬける。
絶対ぬける。

「……テメェ殺されてェのか」
「ごめんなさいでもサトラレなんで」

許してくださいといつものようにだらしない笑みを浮かべるとクロコダイルさんは舌打ちをしてさっさと部屋から出て行ってしまった。
不機嫌を装っていても後ろ姿からして耳が赤いのが丸見えで、今日もクロコダイルさんは最高に可愛らしい。





***



(危ない危ない、誤魔化せたからよかったけど心の声に返事返しちまうとかうっかりにもほどがある。)
(というか「口に出てた」っておれの主張を疑いもせずに信じてくれるなんて、クロコダイルさん!)
(人間不信なクロコダイルさんがここまで信じてくれてるんだからもっと気を付けて騙しきらないと。)

(ねえ、大好きですよ、クロコダイルさん。)