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たまに片手で足りるような年齢の子供が「むかしはね」とたった数年の人生を振り返ることがある。
きっと周囲の大人が話しているのを聞いて覚えたのであろう言い回しは、幼い子供が使うにはなんともちぐはぐで実に微笑ましいものだ。
それでも、あえて宣言しよう。

『おれは昔からおっきいおっぱいが大好きだった』と。

おれの自我がこの子供の身体ではない誰かから続いているのだと気づいたのはつい三ヶ月程前のことだった。
実の親に奴隷として売り飛ばされたおれを間一髪のところで救ってくれた白ひげ海賊団。
その厳つい男どもにオヤジと慕われる人物を仰ぎ見た瞬間、おれの小さい脳みそに電流が走ったのである。
アメージングおっぱい。
おおよそ五歳児が考えるとは思えない言葉をはっきりと脳裏に思い浮かべたとき、おれは全てを理解していた。
昔、顔も名前も思い出せない誰かだったこと。
その誰かはおっきいおっぱいが大好きだったこと。
おっきいおっぱい好きは誰かがおれになっても変わっておらず、なにより目の前にいる巨大な男はすばらしいおっぱい――否、雄っぱいの持ち主であることを。
そうして見るからに肉厚でハリのある雄っぱいと慎ましやかだが口いっぱいに頬張れそうな突起に一目で心を奪われたおれは、子供の無邪気さと天使のような容姿をフルに活用してこの白ひげ海賊団に潜り込んだのだった。
「おとうさん、おさけがほしかったんだって」と俯いて話せば涙と怒りに震え「でも兄ちゃんたちにあえたから、かなしくないよ」と笑ってみせれば涙と歓喜に湧く白ひげ海賊団の面々は、どうやら性格はともかく見た目が怖いせいでおれのようなふわっとしたタイプの子供に懐かれることがあまりないらしい。
みんないい雄っぱいをしているのに子供にはその良さがわからないなんて、本当にもったいない話だ。

「んっ……グララララ……おい甘ったれ坊主、擽ってェぞ」

いつまでしゃぶってるつもりだ、と乳首に吸い付くおれの後頭部を指でそっと撫でるオヤジに「もーちょっと」と甘ったれらしい甘えた返事をしてちろりと小さな舌を出す。
軽く歯をたてたり中心をぐりぐりと舌で穿ると間違いなく性感を含んだ声を漏らして諌めるような言葉をかけてくるオヤジだが、親に捨てられたのが心の傷になって赤ん坊がえりしていると思われているおれを無理に引きはがそうとすることは決してない。
雄っぱいだけでなく心意気まで素晴らしいこの男を、おれはどうにかしてやりたくて仕方なかった。
とはいえ現在のおれは幼児にすぎず、身長差は勿論のこと下の武器すら一切使い物にならない身。
今はただ大人しくこの特大雄っぱいを堪能しつつ、じわじわと開発するが吉だろう。

「ーーーーねえオヤジ、おれ、オヤジのことだいすきなんだ。だからおれね、」

おっきくなったらオヤジのことおよめさんにする。
そう子供ならではの無謀を口にすると笑い皺を刻んでいたオヤジがきょとりと目を見開き、はるか地上に見える兄たちが腹を抱えてどっと笑い出した。

「ッ、グラララララ!!おれが嫁か!そりゃァいい、楽しみにしてらァ!」
「あーっ、おっぱい!」

兄たちから一拍遅れてさわさわと乳首を撫でていたおれをひょいと摘み上げ、頬というか横顔全体に親愛のキスを施してくれたオヤジはよもやおれのセリフが本気中の本気であるとは思ってもいないのだろう。
告白を本気にされないのは悲しいが、今はまだそれでいいのだ。
今は、まだ。