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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「ジャブラ、話がある。この後時間はあるか」
「あァ?またかよ……まだ真昼間だぞ」

突然背後から現れたアルバにジャブラはうんざりとした声をあげた。
至極真剣な顔つきで何か重要な話でもあるような口ぶりをしておきながら、アルバの手が掲げているのはジャブラの好む酒の瓶だ。
つまりこれはただの「一緒に酒を飲もう」という誘いなのである。
それも、理由が理由であるだけに辟易としてしまう類の。

「そう嫌そうな顔をするな。大体任務さえなけりゃ司法の島に昼も夜も関係ないさ」
「そりゃ違いねェが、話ったってどうせまたいつものアレだ狼牙」

タダ酒は悪くないがこうも頻繁じゃ嫌にもなると手を振るとアルバの眉がへにゃりと下がり、上っ面だけは上等の生真面目そうな顔が一瞬で崩れた。
変わってそこに浮かぶのは捨てられた子犬もかくやな良心を責め罪悪感を煽る表情だ。
これに何回騙され面倒をしょい込んだことか。
ジャブラがその顔を苦手としていることを知っていて毎度毎度意識的に作っているのだとわかりながら、結局は「いい酒が飲めるなら」と譲歩してしまう自分が恨めしい。
舌打ちしながら酒を奪い取り、アルバの部屋に向かって廊下を歩く。
早々に折れたからといったって男相手に気を遣うつもりなど更々なく「今度は何だってんだ」と単刀直入に切りだすとアルバがぎゅっと目を眇めた。

「昨日の夜、ルッチを部屋に呼んだ」
「あー……そりゃ、」
「次の任務について確認があっただけだ。他意はない」

他意はない、と言われても長年ルッチに惚れたアルバの恋愛相談もとい愚痴聞き役を務めてきたジャブラへの説得力は皆無である。
仕事にかこつけて部屋に誘い、あわよくばそういう展開に持ち込もうとしたのが見え見えだ。
男同士の生々しいあれこれなんていくらなんでも知りたくはないと全力で引いて見せればアルバは無罪を主張するように小さく両手を上げた。

「だからそう嫌な顔をするなよ、本当に何もなかったんだから。部屋の前までは普通だったのに扉をくぐった途端ルッチの機嫌が異常に悪くなってな……壁にデカい爪痕を残して帰ってしまったんだ」

千載一遇のチャンスを逃した、と真面目くさった顔で呟くアルバに他意はなかったんじゃねェのかと突っ込んで、ふと思い至ったことにジャブラは眉を顰めた。
ルッチに限ってまさかとは思うが、しかし、逆を言えばジャブラと同じくゾオン系能力者のルッチだからこそあり得るその可能性。

「おいアルバ、前におれがお前と飲んだのは一昨日の夜だったな」
「ああ、そうだが」
「おれァ酔いつぶれて、そのままお前の部屋で寝ちまったなァ」
「おれのベッドを占領してな。部屋の主をソファで寝かせるなんてとんでもない男だ」
「……アルバ、猫の爪とぎの意味知ってるか」

きょとりと目を瞬かせるアルバの鈍ったらしい反応にジャブラは深く溜息をついた。
とりあえず、アルバの部屋で飲むのはやめておこう。
ルッチに配慮などする必要はないけれど、嫉妬でつけられた縄張りの主張を見ながら飲む酒など胸が悪くなりそうだ。
ついでに言うとアルバは気づいていないようだが先程から廊下の先に知った気配を感じる。
このぶんだとアルバの広い背中が化け猫の爪の餌食になる日もそう遠くないはずだ。
惚気を酒の肴にするのだけは勘弁してもらいたいと考えながら、ジャブラはアルバの背を叩いた。