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告白しようと思った。
正直なところ、完全なやけっぱちだった。
エースに惚れて、どんな形でも構わないからエースの『特別』になりたくてスペードの海賊団クルーとして必死に頑張ってきたのに、後から出会った白ひげやその息子どもが次々とその『特別』になっていくのを間近で見てしまったらなんだかもう何もかもどうでもいいという投げやりな気持ちになってしまったのだ。
白ひげは確かに器の大きい、魅力にあふれた男だと思う。
しかしどれほど素晴らしい人物であったとしてもおれの船長はエースであって白ひげではない。
おれは、白ひげの息子にはなり得ない。
おれのーー『スペードの海賊団』の船長だったエースが『白ひげの息子』のエースになった今おれが一人白ひげに降ることを拒否したら処遇は一体どうなるのだろう。
敵として殺されるのか、温情を与えられてどこかの島に放り出されるのか。
普通なら前者一択だがあの白ひげが率いている海賊団ならきっと後者なんだろうなと考えながら、おれはどちらにしろ二度と会うことができなくなるであろうエースに、エースの『家族』が集う宴会のど真ん中で嘘偽りのない気持ちを告白した。
これまでのエースの態度から脈がないのはわかっている。
けれど、それが例え嫌悪であったとしても、一度くらいエースの『特別』になってみたかったのだ。

「ずっとエースのことが好きだった。抱きたいとか、おれの手で幸せにしたいとか、そういう意味で」

エースと出会い、仲間に誘われ、スペードの海賊団として冒険して。
楽しかったこれまでのことをぽつりぽつりと話した最後告げた言葉に、エースがぽかんとした、ちょっと間抜けな表情で時間を止めたように固まった。
しんと静まった周囲に聞き耳をたてられていたと知り、別に声を潜めていたわけでもないがそれにしたって悪趣味な連中だと苦笑する。
でもまあ、どうせふられるなら派手な方がいい。
後々笑い話として蒸し返されて、ムッとしながらでもおれのことを思い出してくれれば上等だ。

「エース、返事はくれないのか?」

「無理だ」でも「気持ち悪い」でもいいからおれだけに向けた言葉が欲しくて皮肉っぽく笑いながら一向に動きだす気配のないエースに告白の返事をせっつく。
しかし静まり返ったギャラリーのどこからかごくりと唾を飲む音が聞こえてきてそちらに意識を向けた次の瞬間、不意打ち気味におれの目に映ったのは燃えるように全身を赤く染めたエースの姿だった。

「ぉ、れも……す…、すき、だ」
「……は?」
「だからっ……お、おれも、アルバのこと、すき、で、」

掠れた声を裏返らせながらポッポッと火の粉を散らしていたエースが徐々に視線を下に向けていき、ついには完全に俯いたかと思うとぼろぼろと涙を流し始め、おれはぎょっと肩を跳ねあがらせた。
炎こそ出ていないが熱は相当に上がっているのだろう。
まるまるとした涙の粒が胡坐をかいたエースの足に落ちてジュッと音を立てる。

「エース、その……気をつかわなくていいんだぞ?別に脈がないのはわかってたし、そんな、無理しなくても嫌だったらふってくれて構わないから」
「ちがっ…おれ、すき、好きで、アルバ、でも、アルバは、お、おれなんか、好きになってくれるわけねェから、だから、最初っから、おれ、あっ、諦めっ……、!」

そんなのあるわけないって諦めてて、仲間でいいって、ずっと。
ぶるぶる震えながら涙を流すエースの言葉が信じられず呆然としていると、当人であるおれより先に事態を理解したらしい周囲が爆発したようにドッと湧いた。
「よかったなアルバ!」「おめでとう船長!おめでとう!」
そんな元スペードの海賊団の仲間たちの祝福に混じり「末っ子がプロポーズされた!」「入り婿だ!」という声が聞こえてくる。
入り婿。
なるほど、いやそんな馬鹿な。
微笑ましげな白髭と目が合って狼狽えるおれの服をエースが逃がさないとばかりに両手で掴み、その熱が握りしめられた部分にじわじわと茶色の焦げを作り出す。
想像もしていなかった『家族』への強制加入におれは白ひげを「お養父さん」と呼ぶ未来を想像し、くらりと眩暈を覚えた。