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「おれさァ、実はこの世界の人間じゃないんだよね」
「は?」
「元はもっと平和な別の世界で生きてたんだけど、そこで死んで、神様に会って、その神様にお願いしてここに連れてきてもらったわけ。わかる?」

突然そんなことを言い出した同期の男にクザンは一瞬「ついにイカレたか」と失礼なことを考えた後、今日の日付を思い出して脱力した。
エイプリルフール。
なるほど、いつもどこか浮ついている、お調子者で軽薄なアルバが好みそうな行事だ。
突拍子がなさ過ぎて子供でも騙せないような頭の悪い嘘だが、まあ、人を傷つけるような性質の悪い嘘よりは余程マシだろう。
暇潰しがてら少しくらい付き合ってやるか。
そう考えながら「なんでそれ、おれに言おうと思ったの?」と話を促すと、アルバは嬉しそうに、しかし何を考えているのかイマイチ読めない、へらりとした笑みを浮かべて口を開いた。

「おれ、もうすぐ消えるんだわ」

は?と、先程と同じようにクザンの口から声が漏れる。
神様がくれた時間が終っちゃうからもうすぐ消えるんだ、まだ、もっと先まで見たかったんだけどなァ。
そう笑って話すのをぽかんとしたまま見つめていると「そんなに見つめんなよ恥ずかしい」とわざとらしく身体をくねらせるアルバ。
話しについていけない。
突拍子のない嘘の続きなだけあって突拍子がなさ過ぎた。
ただ、ああ、人を傷つけるような嘘よりマシというのは撤回だ。
この嘘は人を傷つける。
現にクザンはいま、アルバの言葉にどう反応していいのかわからない。

「おれが消えたあとは、おれに関する記憶も消えるんだって」
「……嘘、だろ?」
「嘘だよ?エイプリルフールなんだから嘘に決まってるじゃん」

でもクザンのこと大好きだから全部話しときたかったんだ、と笑うアルバの顔が悲しげに見えて、こんな馬鹿げた話、本当なわけがないのに不安が募る。
とりあえずわかるのは「クザン、好きだ」と真剣な声で奪っていった唇が嘘だと言うのならクザンはアルバを絶対、一生許さないだろうということだけだった。