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ロジャーが死んで数年、行方も告げずにふらりと姿を消した後なんの音沙汰もなかったアルバが、またふらりと何事もなかったかのようにシャンクスの前に現れた。
「しばらく厄介になるぞ」という一方的な物言いも、全体的に筋肉が落ちて威圧感が減ったぶん親しみやすい感じの男前になった容姿も気に食わない。
しかし何より気に食わないのは船に乗せてやったあとのアルバの態度だ。
昔から反応の薄い男だったが、久々に会った恋人にその態度はどうなんだと腹立たしく思ってしまう。
恋人。
そう、アルバはシャンクスの恋人だ。
何も聞かないまま置いてけぼりにされて、長い間連絡すらもらえていなかったとしても、別れ話がなかったのだからそのはずなのだ。
だというのに有無を言わさずレッド・フォース号に乗り込んだアルバの周りをうろうろ付き纏ってみても納得いくまで構ってもらえることはついぞなく、シャンクスの脳裏には今、これまで考えたくなくて意図的に封じ込めていた『自然消滅』という四文字が浮かんでいた。
アルバが老けたぶんシャンクスも同じだけ年を食った。
ロジャーの船で可愛がられていた時と違って体が分厚くなり、傷も増え、髭やすね毛なんかも濃くなった。
海賊で、男なら当然のことだ。
それらを疎んでいるのなら、あるいはこの数年で他に心が移ってしまったというのなら、いっそ姿を見せたりしないでほしかった。
だって、次に会ったら滅茶苦茶に甘えてやるんだと何でもないふうを装って、必死に強がってここまでアルバの不在を耐えてきたのに、今更突き放すなんて酷い、そんなの、あんまりじゃないか。

「……シャンクス?どうしたんだ、こんなところで」

あてがった部屋の扉の前で膝を抱えて座り込んでいるシャンクスを見つけ、驚きの声をあげたアルバに「おれの船なんだからどこにいたって勝手だろ」と言い放つ。
部屋に入れないんだがと困ったように眉を下げるアルバは、もっと困るべきなのだ。
構ってくれないのなら、恋人として甘やかしてくれないのなら、シャンクスのせいで困ればいい。
まるで駄々をこねる子供だとわかってはいるが自分ではどうにも堪えようがなくて、自棄っぱちでギロリと睨みつければアルバはなぜか嬉しそうに頬を緩めた。

「髪が濡れてる。風呂上がりか?もしかして夜這い?」
「そうだよ、悪りィか」
「いや……なんだ、お前、まだおれのこと好きなんだなァ」
「アルバは、違うのかよ」
「違わない。けど、なかなか治らなくて随分待たせちまったから、シャンクスはおれのことなんて忘れてるんじゃないかと思ってた」
「…………治らなくて?」
「ああ、病気だったんだ、おれ」

初めて耳にする不穏な言葉の連続に「はァ!?」と声を荒げると「もう治ったよ」と苦笑を返される。
ロジャーの処刑からすぐ病気が発覚したこと。
言うべきか迷ったものの、治療が上手くいかずに死ぬ可能性もあったから不安にさせるよりは黙っていなくなって酷い恋人だと思わせた方がいいと考えたこと。
無事に完治して会いに来たまではよかったけれど、シャンクスにもう新しい恋人がいるかもしれないと思うと手を出せなかったこと。
知らなかった事実を次々に教えられ目の前の馬鹿を力いっぱい殴り倒したい衝動がシャンクスを襲ったが、実行する前に屈み込んだアルバに額にキスを落とされて、衝動は形にならないまま霧散した。
こうして生きて帰ってきて、まだ自分を好いてくれているならそれでいい、なんて、アルバにはきっとシャンクスを骨抜きにする魔力のようなものが備わっているのだ。

「夜這いしてくれるんだろう?歓迎するよ」

耳元でそう囁くアルバに望み通り構い倒されて機嫌と自信を取り戻したシャンクスだったが、ピロートークの最中「そういえば髭はともかくどうしてすね毛まで剃っちまったんだ」と葛藤の証を指摘され顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしたのは言うまでもない。