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誤解です、浮気なんてしてないです、昨日酒場で少し話した女が大荷物持ってふらついてたから親切心で手伝っただけでやましい気持ちは一切ありませんでした。
そんなふうに必死に釈明してくるアルバが実際のところ何を考えてカップルだらけの大通りを女と二人ぶらついていたのかはわからない。
真実がどうであれ結果は一つだ。
腕が当たるほど近い距離で楽し気に女と笑いあうアルバを目撃してしまったローはショックを受け、取り乱した。
今まで気にし続けていた『やはり男より女の方がいいのではないか』という不安の火薬に火が付いて一気に爆発してしまったのである。
怒鳴って詰って喚き散らして、おれといるときよりあの女とのほうが恋人らしかったおれにはあんなふうに優しくしてくれないくせにずるいおれだってもっとアルバと恋人らしいことがしたいずるいずるいと思い出したくもないほどの醜態を晒した末に、ローは今、アルバに後ろから抱えられるようにして湯を張った浴槽に身を沈めている。
目を輝かせたアルバに「じゃあ恋人らしいことしましょうよ」と連れ込まれたのだが、あの流れで何がどうしてこうなったのか。
訳がわからない。
いや、十中八九自分の言動が原因なのだろうが、アルバがあれをどう受け止めてこうしているのかなど、知りたくもなければ考えたくもなかった。

「いやァ、ローさんあんま甘えてきたりしねェし一緒に風呂とか嫌がるかなーって自重してたんですけど、恋人と風呂でいちゃいちゃすんの昔っから夢だったんですよね!」

上機嫌な様子で「ローさんもこういうことがしたかったんでしょ?」とじゃれるように肌を撫でられ、返す言葉が見つからないままギリギリと歯を食いしばる。
いっそ狂乱状態のままであれば羞恥も感じずに済んだのだろうが、風呂に入った瞬間に脱力感でスッと我に返ってしまったから始末が悪い。
とりあえず、この赤く染まった肌が湯のせいでないということだけは絶対に気づかれないようにしなければ。
この場さえ凌げば、きっとまた元通りの距離に戻るはず。
外れる気しかしない予想を立てながらひたすら顔を俯けるローの耳元で、アルバはこれからしていきたい『恋人らしいこと』を鼻歌混じりに語り続けていた。