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最近よく恋人になったのが間違いだったのかと考えることがある。
以前はそう多くなかったはずの口喧嘩が恋人になって一気に増えたのは、間違いなくおれとローの間にあった絶対的な上下関係が崩れたせいだ。
ただの一クルーだったときには船長であるローの決定に文句なくついていくことができた。
しかし恋人という対等の立場を得て一層欲深くなった今のおれは、ローが意地を張って危険な目に遭うことから日常の些細な意見の食い違いまで、様々な事象を許容できなくなってしまっている。
何よりも悲しいのは口論になるといつもローがおれの言葉の途中で席を立ってどこかへ行ってしまうことだ。
何を言っても絶対に振り向かず真っ直ぐにおれから離れていく背中は沈黙のうちに「お前の言葉など聞くに値しない」と語っているようで、喧嘩をしてその場を去られる度、おれはローにとって対等な存在などではないのだと否応なく思い知らされた。
今もまたちょっとしたきっかけで始まった刺々しい言葉の応酬に、恋人になったのが間違いだったのかという件の疑問が頭をよぎる。
恋人になったからこんなふうになってしまったのか。
恋人でなくなれば元のように接することができるのか。
いつものように腰を上げた険しい表情のローに、もう限界だ、と思った。

「出ていくなら別れる」

乱暴な足取りで扉に向かい、ノブを掴もうと持ち上がりかけたローの手がピタリと止まる。
我ながら面倒くさい女のようなセリフだが、本気だ。
妥協案にたどり着くことすらできないような喧嘩ばかりが続くなら二人が付き合っている意味などない。
他の仲間に悪影響が出る前に元の関係に戻るか、それができない場合は船から降りることも考えるべきだろう。

「ロー、出て行かないなら戻ってきて座れ」

命令するな、と言われるのを承知で投げかけた言葉に返事はない。
それどころか扉に体を向けたまま動く気配すらなく、ローはただ途方に暮れたようにじっとその場に立ち尽くしていた。
振り向かない強張った背中。
握りしめられた震える拳。
肩を掴んで無理やり振り向かせたローの酷い表情を見て、おれはようやく喧嘩したとき必ずローが部屋を出ていく理由を知ったのだった。