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世話焼きと言えば聞こえはいいが、結局のところおれは昔から難のある人間に惹かれやすかったのだろう。
クロコダイルはそんなおれがこれまでの人生で出会った誰よりも難のある、とてつもなく面倒くさい性格の男だった。
自分以外誰も信じず、全てを疑い寄せ付けない。
それで大成しているのだから海賊や組織のトップとしては間違っていないのかもしれないが人としてちょっとどうなんだという感じである。
そんなクロコダイルにちょろちょろまとわりついてはあれこれ世話を焼いたのは、別にその孤独を癒そうだとか心を許せる人間になってやろうだとかを考えてのことではなかった。
面倒な気質の面倒くさい男が放っておけなくてつい手が出たというだけの話だ。
しかしクロコダイルは当然のようにおれを疑って探りを入れ、これまた当然ながら何の思惑も背後関係も出てこないおれに苛立ち、ついには正面から「なにが狙いだ」と問いただしてきた。
「狙いがなきゃ世話を焼いちゃいけないのか」と聞けば、まるでそれが世界の常識であるかのように「そうだ」と衒いなく返してくるものだから、しかたなく「じゃあ」と突きつけた要求はこうだ。

「狙いがなくてもお前の世話を焼いていい関係になりたい」

おれにしてみれば告白にも等しかったその言葉を、口から葉巻を落として目を見開いたクロコダイルがどう受け取ったのかは知らない。
けれど奇怪なものを見るような目を向けられながらも殺されはしなかったこととそれからしばらくしてクロコダイルの態度が目に見えて変わったことからして、おれの要求はどういった形かで叶えられているのだろう。
一人きりの家で風呂に入り、あがってみたらベッドの上にクロコダイルという謎の現状だって要求を口にする以前であればありえなかったことだ。
ソファのあたりに脱ぎ捨てていたはずの服を腕に抱いて無防備に横になっているクロコダイルに近づくと、気配で目を覚ましたのか元から寝たふりをしていただけなのか、鈍く光る鍵爪がゆらゆらと持ち上がっておれの首を捉えた。

「やっと出てきやがったか」
「そんなに長風呂したつもりはないんだけどなァ……ところでクロコダイルさんや、抱き付くならガワじゃなくて中身にしときませんか」
「……石鹸くせェ」

鍵爪を首に引っ掛けておれを引き寄せたクロコダイルがすんすんと首筋の臭いを嗅ぎ、心底嫌そうに鼻に皺をつくる。
これが拒絶ではなく「お前の臭いがしないのは嫌だ」という甘えなのだからクロコダイルは本当に面倒くさい男だ。
首から鍵爪を外し、緩められた腕の隙間からクロコダイルの体温が移った服を抜き取って風呂上がりの身体に纏う。
そうして若干汗臭い服で再度ベッドに上がるとすん、と鼻を鳴らした直後クハハと小さく笑って胸に額を擦り付けてくるのだから、クロコダイルは本当に、もう。