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ほんの少し距離を詰めただけで逃げ場を求めるように視線をさまよわせ、僅かでも触れようものなら驚いた猫みたく跳び上がって転倒するコラソンに「いい加減にしろよ」と長ったらしいため息を吐く。
コラソンの奇行の原因はまず間違いなくおれだ。
先日「抱くならどういう奴がいいか」という下世話な話題で盛り上がったとき「普段無口で素っ気ない奴って無茶苦茶丁寧にかわいがってデカい声で喘がせたくなるよな、コラソンとか」と返したのがまずかったのだろう。
もちろんからかうつもりでわざと聞こえるように言ったのだが、まさかここまで過剰に反応するなんて思いもしなかった。
嫁入り前の生娘じゃあるまいし海賊団の幹部が下ネタの一つや二つ流せないでどうするんだ、まったく。

「ほら、コラソン落ち着け。別に襲いやしねェから逃げんなって」

起こしてやろうと腕をつかんだ途端パニックになったコラソンが手を振り払って逃げようとしたので肩を蹴り飛ばして再度床に這いつくばらせる。
些か乱暴ではあるが、アジトに二人きりというこの機を逃せば徹底的に避けられるであろうことは目に見えているのでしかたない。
コラソンだって男にケツを狙われてると思いこんだまま怯えて生きていくのは御免だろう。
互いの快適な海賊生活のために話し合いは必須なのだ。
さあ平和的に解決しようと息巻き、なおもじたばた暴れるコラソンを足で押さえつけて見下ろす、と、仰向けで床に貼り付けになったコラソンが何かを隠すように身をよじった。

「…………あ?」
「〜〜ッ!」

目を引かれて視線をやった先には、太腿をすり合わせる程度では到底隠しきれないほど張りつめた股座のそれ。
悪足掻きのように腕で覆われる直前、目にしたコラソンの表情は嫌悪ではなく羞恥に歪んでいて。


「――ああ、なに、嫌だったんじゃなくて期待しちゃったの」


予想外のことに呆然としながら、それでも自然と言葉が漏れる。

「お望みなら、イイ声が出せるまで丁寧にかわいがってやろうか?」

続けざまの問いは、言っている自分でも笑えるくらい拒否権のない響きをしていた。