「どこへ行くんだ……?」 布団の隙間から入り込んだ冷気で目が覚めたらしく、ふるりと小さく身を震わせて瞼を開いたたモモンガ中将が手探りでおれの腕を掴む。 今日は休日だということもあって気が抜けているのか普段寝起きでもピシッとしているモモンガ中将が珍しく寝ぼけ眼のまま、覚醒しきる様子がない。 「水を飲みに行こうかと……中将も飲まれますか?」 なんでとは言わないが声が掠れているし、喉だって乾いているだろう。 おれの提案を「いや、」と一度否定した後ほんの少しだけ強く腕を握りなおし「そうだな、私も喉が渇いた」と立ち上がろうとしたモモンガ中将を制して「おれが持ってきますよ」と気を使ってみせたのは、これもなんでとは言わないが、きっと身体が怠いだろうと察したためだ。 水くらいコップなり水差しなりで簡単に持ち運べるのだから、中将はこのままベッドでゆっくりしていればいい。 そう思ってベッドから立ち上がったおれの腕からモモンガ中将の堅い指がするりとはずれ、そしてまた追いかけるようにして、今度は指が外れないよう強く手を掴みなおされた。 「モモンガ中将?」 不思議に思って振り返ると、ベッドの上ではなんとも言えない表情のモモンガ中将が「いや、その、私も」と髭の下でもごもご唇を動かしている。 普段にはない不明瞭な態度に目を瞠り、これはもしやと握りしめている手を撫でればほのかに色づく目元。 「……モモンガさん」 情事中以外は使わない呼び方をして「やっぱりまだ眠いので、水は後にして一緒にもうひと眠りしませんか」と聞いてみると、モモンガ中将はしばらくの沈黙のあとコクリと頷いた。 皺を刻んだ肌が一層赤みを増しているのは心中を見抜かれて甘やかされたという自覚があるからだろう。 頼ることや甘えることに羞恥を感じて隠そうとしてしまう年上の恋人もそれを稀に暴いてくれる休日の早朝も、おれは全てが愛おしくてたまらない。 |