アルバにレディへの態度を強く咎められ、つい売り言葉に買い言葉で「そんなに唐変木が好きならマリモでも構ってろ」と言ってしまったのが三日前。 その瞬間出会ってから一度も見たことがないような冷めた顔をおれに向けたアルバは今、甲板の上でゾロと並んで談笑している。 それ自体は別段珍しいことではない。 もとより柔和で会話上手なアルバはぶっきらぼうなゾロとも衝突することなく和やかにやりとりしていた。 しかし、しかしである。 あいつらの距離が近いように思えるのは、アルバの笑みが以前より穏やかに見えるのは、ゾロと名を呼ぶ声に甘さを感じるのは、おれの気のせいか? きっとそうだ。 気のせいに決まっている。 だってアルバはそんな、簡単に心移りするような軽い男ではない。 ただあんなことを言ってしまって、アルバが怒ったみたいだったから過敏になっているだけ。 おれと過ごす時間が減っているのは口喧嘩をして少し気まずくなっているからで、しばらくすれば元通りになるはず。 そう信じ込まなければ、おれはこの逃げ場のない海の只中で息ができなくなってしまう。 「…………あ、」 じりじりとした焦燥に焼かれながら視線を送る先でアルバがゾロの短い髪を指先でつまみ、そのままくしゃくしゃと頭を撫でた。 思わず口から漏れた声は耳に届かなかったのか揃ってこちらを振り向きもしない。 まるで二人の世界とでもいうような光景。 見たくないのに目を離せず、じわりの目の奥が熱くなった。 嫌だ。 いやだ、アルバ。 声にならない言葉を胸に抱え、握りしめた拳をぶるぶる震わせる。 そんなおれの情けない姿を先に捉えたのはよりによってアルバではなく、いけ好かないマリモの方だった。 「おら、もう十分だろうが」 今まで撫でられるがままだったアルバの手をべちりと叩き落とし「お前ら面倒くせェ」と吐き捨てるようにその場を立ち去る背をぽかんと見つめる。 戸惑いながら視線を移すと慌てておれの元へ駆け寄ってきたアルバが必死に謝りながら上着の袖で頬を拭ってきた。 知らぬ間に両頬を涙が伝っていたらしい。 「サンジごめん、ごめんな、サンジもちょっとはおれと同じ気持ち味わえばいいと思って意地悪したんだ。ほんとにごめん」 嫉妬させるためにわざとゾロに好意的に振る舞ってたとか、浮気はしてないとか、泣かせるつもりじゃなかったとか。 そんな言い訳をする前に抱きしめるくらいしやがれクソ野郎。 |