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コラソンが能力者であること、喋れないフリをしていること、海軍に送り込まれたスパイであること。
すべてを知ったうえで誰にも告げず泳がせていたとドフィに気づかれたとき、おれは潔く死を覚悟した。
たった一人の血を分けた家族をドフィに失ってほしくなかったなんて、そんな馬鹿みたいな理由、口にしたところで裏切りは裏切りだ。
勝手な判断でファミリーを危機に晒した以上ドフィはおれを許してはくれないだろう。
どうせ死ぬなら、見苦しいとは思われたくない。

「……命乞いしねェのか」

唇を引き結んでおれを見下ろしていたドフィがゆっくりと口を開く。
真っ直ぐに向けられた銃口といい、まるでコラソンが死んだ時の再現のようだ。
おれがお節介で生かしていた実の弟ですら何の躊躇いもなく殺せるんだから、きっとおれの生死になんて興味すらないんだろうな。
そう考えて、それでいい、と少しだけ唇を持ち上げた。
そう、それでいい。
おれなんかのためにドフィが悲しむなんて、そんなのはあってはならないことだ。

「フフッ、フッフッフッ!こんなときに笑うたァ、随分と余裕だなァ?」
「余裕……いや、他にすることがないだけだ」
「することがないなら泣いて許しを乞うのはどうだ?馬鹿なことをしたもんだがお前は大切な……大切な、家族だ。言い訳があるなら聞いてやる」
「必要ない。殺してくれ」

優しい言葉に、それでもケジメはつけなければと首を振るとドフィの口元がピクリと動いた。
小さく腕が震え、頭に向けられていた銃口がぶれる。
あきらかに様子がおかしいドフィにどうしたのかと眉を寄せていると、パンッと乾いた音が響き、同時に肩から噴き出す鮮血。
頭じゃない。
胸でもない。
撃たれたのは間違いなく肩だ。
狙いを外した?
こんな至近距離で?
素人じゃあるまいし、そんな馬鹿な。
痛みに呻きながらも状況を把握するために顔をあげると、動脈を傷つけたのか、だくだくと流れ出して地面に溜まっていく血を見てドフィが蒼白になっていた。
そんな馬鹿な。

「……アルバ、言い訳を、しろ。命乞いすれば、まだ、今なら」

まだ助かる。
そう縋るように言葉を吐いたドフィを、失血により刻一刻とぼやけていく目で呆然と見つめる。
実の弟を顔色一つ変えずに殺したドフィが命乞いと言い訳を求めた理由に今更気づいたおれは、どうやらとんでもなく鈍い男だったらしい。