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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




おれはお頭――四皇・赤髪のシャンクスの『お気に入り』だ。
酒場で突然「仲間になれ」と勧誘され二つ返事で船に乗ってからというもの、日用品を調達しに船を降りれば必ず一緒についてきてくれるし雑事をこなす間も気づけば傍にいてあれこれ話しかけられる。
最初は新入りが船に慣れるまでフォローしてくれているのかもと思っていたのだが古株の誰に聞いても「そんな気の利いた事ができるわけがない」という船長に対してそれはちょっとどうなのかという答えしか返ってこなかったので、まあ思い上がりではないだろう。
おれはお頭の『お気に入り』だ。
間違いなく『お気に入り』だった。
はずなのだが。

「……おいアルバ、お前、お頭となにかあったのか?」
「いや、おれにもちょっと……何が起きてるのかさっぱり」

朝起きてから今に至るまで会話どころか挨拶すら交わすことなく、たまに遠くからこちらを見ていると思えば目が合った途端すごい形相で睨んでくるお頭におれの脳みそは絶賛混乱中だ。
昨日、というかつい数時間前まで懐き切った大型犬みたく周囲に花を浮かべながら近寄ってきていたのに、とんでもない手のひら返しである。
そう、昨夜まではいつも通りだった。
宴の最中ずっとおれの隣を陣取って、おれの酌でご機嫌に酒を飲んでいた。
それがどうしてこんなことに。

「酔ってなんかやらかしたんじゃねェか?」
「やらかすって、ただ普通に話してただけだぞ」
「普通?本当に?」
「本当だって。おれの故郷の話で盛り上がって、」

そこまで言って、あ、と声が漏れた。
「やっぱり心当たりがあるんだろう!」と鬼の首を取ったように騒ぐ男の口を手でふさぎ、先程以上の混乱により逆に冷静になった頭で考えをまとめる。
確かお頭と最後に話したのは、ご近所のお姉さんに初めての恋をしたアルバ少年はどうやら少々態度があからさますぎたようで「私アルバくんのことそういう目では見れないから」と釘を刺されて残念無念、見事告白前にフラれてしまったのでしたという、珍しいといえば珍しいが物凄く珍しいというわけではない苦い失恋を昇華させて生まれた笑い話だった。
それでその後「お頭も好きな人ができたら態度に出そうですよね、おれみたいにならないように気を付けてくださいね」と冗談を言って、お頭はなぜか、今思うと少し引き攣ったような、無理やり張り付けたような笑みを浮かべてて。

「……いくらなんでも、あからさますぎでしょうが」

態度に出さないように頑張っているんだろうが完全な裏目だ。
おれ、あんたの好きな人わかっちゃいましたよ、お頭。