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「#幼馴染」のBL小説を読む
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風邪をひいたらしいと本人の口から聞いたときには云十年の付き合いにおいて初めて耳にする『風邪』という単語に驚き焦り慌てふためいたものだが渋るボルサリーノを無理やり医者に引きずっていけばなんのことはなく、熱は高くないものの鼻水とくしゃみがとまらないという典型的な鼻風邪だった。
常時ぐずぐずと鼻を鳴らし、たまに「うー」とか「あー」とか意味のない呻き声をあげ、ひたすら機嫌とテンションが下がりまくっていてキスさせてくれない以外は普段となにも変わりない。
いや、最後に関しては風邪がどうこうというよりそれに付随したおれの行動が原因なのだが、でも、しかたないだろう。
普段どれだけ頑張って濃厚なキスを仕掛けても余裕を崩さないボルサリーノが、たった数秒口をふさぐだけで息継ぎの仕方がわからない生娘のようにはぷはぷと拙い呼吸を繰り返すのだ。
あんなもの、興奮しないほうがおかしい。
とはいえその興奮のままに覇気まで使って押さえつけて酸欠で倒れる寸前までキスを続けてしまったのは悪かったと思っている。
体調の悪い恋人を力任せに襲うなんて愚行は自分の正義に誓って二度としない。
だから、そろそろ許してくれないだろうか。
せっかくの二人っきりなのにいちゃいちゃできないのつらすぎる。

「……そんな顔しても、風邪が治るまでキスはさせねェよォ〜」

キスで窒息死なんて碌でもない死に方したくないからねェ、とジト目でこちらを見るボルサリーノにロマンチックないい死に方じゃないかと返すとティッシュの空箱を投げつけられた。
自分の死因はボルサリーノとのキスがいいと純粋に思っただけなのだが、どうやら反省の色なしと判断されてしまったらしい。
このぶんでは本当に風邪が治るまでキスさせてもらえなさそうだ。
誤解からの拒絶とは、なんとも悲しい結末である。

「……じゃあボルサリーノ、風邪が早く治るように、おまじない」
「な、……!!!」

せめてもの慰めにとボルサリーノが反応するより早く、擦りすぎで赤くなっている鼻の頭に唇を落とす。
顔を離すと同時、すぐ様かざされた指が発光して目を潰されてしまったため表情を見るのは叶わなかったがキスやそれ以上のときでさえ平然としているくせこういう些細なスキンシップにはいつまでたっても慣れないボルサリーノのこと。
きっと今頃、酸欠で息を荒げていたときと同じように真っ赤にでもなっているんだろう。

「……な、に、を、笑ってるんだァい?」
「笑ってないよ」
「ウソをつけ〜、笑ってるだろォ〜…!」

チカチカと視界が点滅するなか鼻声で凄むボルサリーノがおれの唇を指でつまんできた。
どんな顔でそうしているのかと想像してやっぱりキスがしたくなったので、ボルサリーノは早急に風邪を治すべきだ。