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「#幼馴染」のBL小説を読む
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お頭の気持ちを知ってやっかいなことになったなと思ったものの、冷静になってよく考えてみれば現状は特段やっかいというほどでもないのかもしれない。
だって、告白されたわけではないのだ。
それどころかお頭はおれへの想いを隠そうとしている。
まあそれが裏目にでてしまったわけだが、つまり目下お頭が望んでいるのは関係の発展ではなく現状維持ということだろう。
それならばおれは知ってしまったことに蓋をして見て見ぬ振りをすればいいだけだ。
幸か不幸か、あまり深く考えたくはないが同性に好かれて気色悪いと感じるたちではなかったようだしお頭がこれまで通りを望むのなら全部忘れて『お頭のお気に入り』を続けることもやぶさかではない。

そう思って話を大きくしないように努めているのに、当の本人がこれなのだからまったくもう。

「……おい、なんだよ」
「別に、見てるだけです」
「見んな」
「命令ですか?」

おれの問いにぐっと言葉を詰まらせ、しかししばらくの沈黙のあと「見んな」と繰り返したお頭におれは肩をすくめてその場を去った。
背中には痛いくらいの視線が突き刺さっているのに振り向けば目をそらされるか、さもなくば一層鋭い目つきで睨みつけられるのだからまったくもってままならない。
話しかけられて喜んでしまいそうだから顔をしかめるとか見つめられて顔が赤くなりそうだから拒絶するとか、そんな態度ばかり取られておれがどう感じるかお頭は考えていないんだろうか。
理由に気づいていなければ間違いなく傷ついただろうし、わかっていたとしても気分のいいものじゃないんだが。
そこまで考えてハッとした。
傷つく。

「……そうだ、傷つくよな」

お頭に気を使ってせめておれだけでもいつも通りの行動をとろうと心がけてたけれど、親しくしていた相手から突然冷たくされるようになったら普通はとても傷つくはずだ。
もう以前のような関係に戻ることはできないのかと思い悩み、自棄になって船を降りようとしてもおかしくはない。
そうなればさすがにお頭だって自分の行動が悪手だったと気付いてくれるだろう。
気付いて、それでも態度を改めてくれなかったらそのときはそのとき。
行き当たりばったり感は否めないが、思いつきにしてはなかなかいいアイデアだった。

「よし、傷つこう」

思い立ったら即実行。
押して駄目なら引いてみろ、だ。
お頭のように不自然にならないようあくまでも慎重に。

ーーとりあえず見るなと言われたことだし、視線を合わせないことから始めてみようか。