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「会議が長引いて腹が立つのはわかるけどねェ〜……だからって、それ以上紛糾しねェように意見調整してるアルバを睨む理由にはならねェだろォ〜?」

ゆったりとした着流し姿で頬杖を突きながら話すボルサリーノに、サカズキは「あァ?」と短く不機嫌な声を返した。
帰宅後のアルバとの穏やかな時間に突然家を訪ねてきたと思ったら図々しくも晩酌を要求され、そのうえで謂れのない誹りまで受けているというのだからサカズキの機嫌が底を這うのは当然のことだ。

「……おどれ、そんなくだらんことを言うために家にまで押しかけてきよったんか」
「電伝虫が通じなかったんだからしかたねェだろォ?それにわっしが言わなきゃ下の連中がうるさくてねェ……とりあえずアルバのこと睨むのはもうやめときなよォ〜」
「誰も睨んどらん」
「嘘をつけェ〜、アルバのこと会議の最中に毎回睨んでるだろォ〜?すっごい目でェ」

しつこく言い募るボルサリーノに苛立ちいい加減にしろと言わんばかりに机を叩くと、音を聞きつけたらしいアルバが「どうした?」と襖の向こうからこちらを覗き込んできた。
平行線のやりとりに、いっそアルバ本人の口から確認すれば事実を認めるかと考えたのはほぼ同時だったのだろう。
僅かに早く口火を切ったボルサリーノが「会議のときサカズキがアルバを睨んでるって話をしてるんだけどもォ〜」と話すのを聞き、サカズキは自身の主張が肯定されることを確信して鼻を鳴らした。
しかし。

「あー……まあ、そうだなァ」

曖昧に、けれど間違いなくボルサリーノの言葉に頷いてみせたアルバにサカズキは思わず瞠目し、動きを止めた。
会議の際アルバはいつも皆の意見を纏め、調整し、会議の進行に貢献している。
それを知りながら睨みつけるなど、そんな馬鹿なことがあるはずがない。
どういうことだと混乱するサカズキにアルバの「癖だから仕方ないし頼られるのは嬉しいけど、会議中はさすがに難しいんだよなァ」という柔らかい声が追い打ちをかけた。
サカズキがアルバに構われたいとき無意識に睨む癖があるというのはあくまでアルバの誤解であり、実際のその行為はサカズキの明確な意思のもとに行われている。
行われている、はずだ。
だがもしそれが自分の知らぬ間に本当の癖になってしまっていたとしたら。
アルバに甘やかされることを求めて会議の最中に意図せず睨みつけてしまっていたのだとしたら、それは。

「……睨まれて嫌じゃないのかァい?」
「ああ、嫌じゃないよ」
「……へェ〜……なるほどォ?」

はにかむアルバと頬に熱を集めてぶるぶる震えるサカズキの態度を合わせて何かを察したのか、ボルサリーノは呆れたように首を振って椅子から立ち上がった。

「ご馳走様ァ〜」

うるさい。
早く消えてくれ。