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泣いて泣いて涙が枯れるまで泣き腫らした翌日、最悪な態度をとったドレークに、それでもアルバは優しかった。
相槌を返すことすらままならないドレークに辛抱強く話しかけてくれる様子は正しくあの扱い辛かっただろう『少年』に対する対応そのもので、そのうち会話することを諦めてしまってもドレークの存在を己から締め出そうとはしないアルバに今や抱くことすら罪深く思える想いは大きくなるばかりだった。
アルバは優しかった。
それは、もしかしたらいずれ完全な能力制御に成功するか希少な海楼石を手に入れることでもできれば、そのときは良好な関係を築きなおせるかもしれないと想像してしまうほどに。

だから。

「……あー、やだなァ。入りたくねェ」

誰に聞かせるつもりもなかったのだろう。
本来であれば人の耳に入ることはなく空気に溶けて消えたはずの小さな声。
そんな扉越しの独り言をタイミング悪く拾い上げてしまい慌てて耳を塞ぐという何ともちぐはぐな行動の後、ドレークはようやっと手遅れなのだということに気が付いた。
手遅れだったのだ。
何もかも、とっくの昔に。

呆然と固まるドレークの耳が、次いで扉のノブを回す音を聞き取った。
何かを考える前にベッドに潜り込んだドレークにアルバが「ただいま」と声をかける。
何事もなかったかのような声は相変わらず優しくて、その優しさはドレークの引きちぎれそうな心臓をいとも容易く叩き潰したのだった。