「お前のこと怖がってるやつがいたって?そりゃあ、多分アルバだな。あいつ爬虫類全般苦手だからよォ。昔も大部屋にちっこいトカゲが出ただけで顔強張らせてたし、恐竜もなァ」 男のくせに情けねェよなァ。 そう言ってアルバを貶めながらドレークの背を叩く男は、別に本気でアルバを馬鹿にしているわけではなく単純に落ち込んでいるドレークのことを元気づけようとしてくれているだけなのだろう。 しかし残念ながら男の話は今のドレークにとってなんの慰めにもならなかった。 爬虫類が苦手だなんて、そんなこと、今更教えられたって後の祭りだ。 ドレークはもうアルバの前にあの姿を曝してしまった。 小さなトカゲにすら顔を強張らせるというのなら、恐竜になったドレークへの嫌悪感はどれほどのものだったろうか。 恐ろしいと、悍ましいと思われたに違いない。 自分を見上げるアルバの目を思い出すと感情の乱れに反応して服の下の皮膚が身を守ろうとするかのようにざわめき、みるみるうちに硬化していく。 アルバの側へいくために必要な力だと思っていたそれが、いまは海賊より何より憎らしい。 アルバに近づきたくて、今度こそ対等になりたくて、そして、その上でもう一度笑いかけてもらえたらどんなに素晴らしいだろうと夢想して。 それだけだ。 それだけだったのに、それが、こんな結果になるだなんて、そんなの誰が。 「お、おい、そんな顔すんなって……あいつァ情けない弱点はあるが、いい奴だ。能力が苦手だからってそれを理由にお前を否定したりはしねェよ」 黙り込んだドレークが直属ではないとはいえ上官にあたるアルバに目をつけられて不安がっているとでも思ったのか知った顔でアルバの人格を語る男を、親切心からだと理解しながら、それでも「お前に何がわかる」と詰りたくなってしまうのを抑えられない。 確かにアルバは優しい、善良な人間だ。 それは僅かな期間とはいえ寝食を共にしたドレークとて嫌という程知っている。 しかしどんなに素晴らしい人間であろうと苦手なものに対する生理的な嫌悪感を消しきることはできないだろう。 鱗を持つ生き物を身に宿しているドレークは、否定されずとも、受け入れられもしないだろう。 いっそ『少年』のことを忘れてしまったように『恐竜』のことも記憶から消してくれればいい。 それさえ叶うなら、今度こそ絶対、身の程知らずな欲をかいたりしないと誓うのに。 |