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ロジャーには「なんで素直に誘わねェんだよ」と呆れられたが、レイリーはアルバを縛り上げて海に連れて出たことを特段間違いだったとは思っていない。
なぜならアルバはレイリーのものだから。
言葉にすると傲慢にも聞こえるそれは、思い上がりでもなんでもない公然の事実である。
なにせ海に落ちていたアルバを拾ったのは他でもないレイリー自身であり、アルバはそんなレイリーに惚れていて、三年間毎日のように愛を囁かれ、酒の勢いではあるが強引に迫られてキスを交わしたことだってあるのだ。
これがレイリーのものでなくて何だというのか。
アルバがレイリーの傍からいなくなるなどあり得ない。
島の人間は皆それを理解しており、過去には幾度か、物好きにもアルバに気があるらしい女に「その気がないならアルバさんを解放してあげて」と迫られたこともあった。
迷惑な話だが当然といえば当然だ。
取捨選択の権利はアルバではなく、いつだってレイリーの側にある。
それがあの小さな島の、小さな世界の常識だった。
だからレイリーは断じて悪くない。
アルバが蓑巻きで船に転がされる事態に陥ったのも二日酔いと船酔いで吐き気に襲われて顔を真っ青にしていたのも、全てはレイリーの手を離し、常識を覆そうとしたアルバの責任だ。
アルバが最初から素直にレイリーのものとして行動していればこんなことにはならなかった。

こんな思いは、せずにすんだのに。

「レイリー、なんでそんな機嫌わりィんだよ」

もう逃げたりしないって、と眉を下げているアルバはレイリーのことを何もわかっていない。
わかっていないのにわかっていると思い込んでいるあたりが素晴らしく厄介だ。
レイリーは常々周囲から刹那的であらゆるものに対する執着の薄い男だと思われてきた。
それはレイリーが家も守るべきものも一切持たず寝床代わりの船と身一つで自由気儘に生きてきたゆえで、アルバもきっと、そう思っているからこそ選択を誤った。
そもそも選択肢など存在しないのに、よりによってレイリーと道を違えることを選択しようとした。
あり得ないことだ。
あり得てはならないことだ。
レイリーの生き方が刹那的であることは否定しない。
そうでなければ、間違っても海賊になどなりはしないだろう。
けれど執着の薄い人間だという評価に関しては半分正解、つまり半分は不正解である。
レイリーはこれまでの人生においてそういった機会がなかっただけで、本来は一度執着するととことんまで執着し続ける、独占欲の強い面倒な性質の持ち主なのだ。
アルバがレイリーと距離を置こうとするのも、ロジャーばかり構おうとするのも気に食わない。
とても、とても気に食わない。

「なあレイリー……なあ、そんなに怒らないでくれよ」

必死に下手に出て機嫌を取ろうとするアルバにふんと鼻を鳴らし、レイリーはわざとらしく顔を背けた。
惚れた相手がどんな男なのか理解しないままずかずかと踏み込んできたアルバは、機嫌を取るより先にお互いもう戻りようのないところまで来てしまっているのだということを早く理解するべきなのである。