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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -





君の瞼にキスをする

俺の恋人は俺に冷たいと思う。
確かにしつこくしつこく付きまとって付き合ってもらったのは俺だよ?
それからエッチにこぎ着けるまで半年もかかったけど。まあ、その理由が「体のことで俺に嫌われたくないから」って超可愛い理由だったから余裕で許したけどね?
別に俺はあいつの性別とか体で好きになったわけじゃないし。普通にそのまま恋人を続けてきた訳ですが。

「正直寂しい…」
「いや、いきなり来てそれだけ言われても困るんだけど」

いやいや、聞いてよベビー5。俺お前らくらいしか相談できるやついないんだって。

「友達いないの?」
「お前だっていないじゃん?」
「……それもそうね」

このファミリーの幹部やってて友達なんかできるか。多分速攻で若様に消されると思う。

「というか、あんた恋人いたのね」
「うん、言ってなかった?もう結構長く付き合ってるんだけどさー、ここ最近避けられてるっぽくて寂しい」
「振られるんじゃないの?」

…やめて、それ本気で洒落になんない。
確かに俺あんまり愛されてるとは思ってなかったけど。好きとか滅多に言われないけど。
それでも好きだから出来るだけ側にいたいし、何か悪いとこあるなら直すし。

「でもそれを聞き出そうにも話も聞いてもらえないんだよー」
「知らないわよそんなの。自分たちの問題なんだから、自分たちで何とかしなさいよ」
「うー…ベビー5も俺に冷たい…」

何だよちょっとくらい相談に乗ってくれてもいいじゃん。
傷心の幼馴染を慰めてくれたっていいじゃん。

「うるさいわね。さっさと行きなさいよ」
「…振られたら慰めてね?」
「はいはい」




んー…どうしよっかなぁ。
このまま会いに行ってもまた避けられそうだし。
確実に部屋にいるだろう夜中に強襲かけてみるか。

「あ…っ、ナマエ!」
「え、ベラミー?」

腕を引かれたと思ったら、今朝まで絶賛俺を避けてた恋人の姿。
うん。いつ見ても可愛い。身長のせいで上目遣いになっちゃうとことか超可愛い。
何より自分から話しかけてきてくれたことが一番嬉しい。ヤバイな、今絶対ニヤけてる。ちゃんとしないと。カッコ悪いとこなんて見せらんないからな!

「どうしたの?」
「いや…あの、な…ちょっと話があんだけど」
「いいよ。ここで?」
「…部屋がいい」

うーん…珍しく歯切れが悪いけど。この感じからして、多分、別れ話じゃない…かな?
いや別れ話とかされたら、俺落ち着いていられり自信ない。絶対みっともなく取り乱すだろうなぁ…
ヤだなぁ…失望されんの。



「で、どうしたの?」
「あ、のな、ナマエ……が、きて…」
「え?ごめんもう一回」
「だ、から…」

握った手が真っ白になるくらいに震えてる。
というか、泣きそう?
え、何そんな大事なこと?

「大丈夫?今日はやめとく?」
「や!待ってくれ、ちゃんと言うから!」
「ちょ泣かないで。ホントに大丈夫?」

顔を上げたと思ったらボロボロ泣いてた。
え、ちょ、これホントに大丈夫なの?
頭やら背中やらを撫でて慰めつつ続きを促してみる。

「あの…お、れ…」
「うん」
「……こ、ども…が…」
「子供が?どうしたの?」
「で、きた…みた、い…で」
「………え?」

え、えー…?
ちょっとまっておいつかない
ちょっと落ち着いて整理しよう。
なんか最近避けられてる恋人から大事な話があるって言われて、もしかして別れ話かと思ってたら恋人ボロ泣きし出して、その理由が「子供が出来た」……?
って

「子供ぉおおおお!?え、マジ?ベラミーマジなのそれ!?」
「お、おう…」

あ、ごめんビックリさせた。でもそれどころじゃない!

「やった!よかった別れ話じゃなかった!」
「は…?」
「もー、そういうことなら早く言ってくれれば俺が若様に言ってお前の仕事減らしてもらったり、休みもらったりできるのに!」

あーよかったよかった。
嬉しくてぎゅうぎゅう抱きしめてたら、我に返ったらしいベラミーが慌てだした。

「ちょ、ちょっと待てよ…!」
「ん?あ、ごめん。苦しかった?」
「や、そうじゃなくて……いいのか?」

うん?何が?
…あ、もしかして子供のこと?

「俺が堕せって言うと思ったの?」
「だ、って…俺、男だし。お前の負担になるかもって」
「馬鹿だなぁ、ベラミー」

ホント、可愛すぎるくらい馬鹿。

「俺がベラミーのことで負担に思うことがある訳無いじゃないか。きっと俺は君が思ってる以上に君のことをずっと愛してるのに」

伝わってなかった?って訊くとまた泣き出してしまった。
どうしよう。また泣かしちゃった。

「おれずっと…ずっと不安で…!お前はこんな体のおれを受け入れてくれたのに、ずっと好きって言ってくれてんのに素直になれなくて嫌われやしねぇかとか、いつ愛想尽かされんのかとか、そんな、お前の言葉とか愛とか…疑う自分が一番嫌で…!」
「そっか…悩んでくれてたんだ」

ごめんね、君がそんなに悩んでたってことが俺はすごく嬉しいんだ。

「もう、そんな心配しなくていいよ。順番は変わっちゃったけど。
ベラミー、一生大切にする。一生愛して、ずっとずっと傍にいるよ。だから、俺と結婚してくれますか?」


『泣きながら頷いた、君の瞼にキスを』


(若ー若ー!産休下さいな!)

(ちょ、ナマエ!)

(フッフッフ!何だァ?随分楽しそうじゃねぇか、何かいいことでもあったのかぁ?)

(世界で一番好きな人が!俺のお嫁さんになってくれるって!)