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「あの、ごめんね、いろいろと巻き込んでしまって」

今日も今日とて僕の不運は絶好調だった。
何もないところで転ぶのは当たり前、歩けば穴に落ち、たまたま通った木の下で蜂に襲われ吹っ飛んできたバレーボールは狙ったように顔面に直撃する。
服は血だか泥だかで汚れてしまっているし髪の毛もボサボサ。
それは別にいいのだ。
毎日のことで慣れているし、むしろ今日はかなり被害も少ない。
問題は今日一日僕の隣に並び、僕を庇いながら共に行動した義助である。

「いや、勝手について回ったのは俺だから」

気にするな、と笑う義助を横目で伺うと彼の整った顔に傷が出来てしまっていた。
あくまでも薄い擦り傷だし痕は残らないとおもうが彼の顔を傷つけてしまったというだけで罪悪感が胸を縛る。
気にするなとか、無茶なことを言う。
義助は知らないからそんな簡単に済ませようとするんだ。
僕がこの六年間義助に対してどんな思いを抱いていたのか全然知らないからそうして笑っていられるのだ。
いつだったかくノ一教室の女の子が「子供の頃一度は憧れる完璧な王子様」と評していたのを「まさしく」と感じてしまったその時から、義助は僕の憧れの王子様なのに。

「……義助」
「どうした?」
「義助は、格好いいな」

少し目を見開いて、ふっと口元を緩める様も現実味がないほどに格好いい。
ありがとうと動く唇に今更ながら恥ずかしさがこみ上げて「さすがに言われ慣れてると対応が余裕だ」とからかった。
完璧な王子様に憧れるのは子供の頃だけ。
ならば一年生から今までずっと彼に憧れ続けている僕は一体何なんだ。

「格好なんてどうでもいいんだよ。ただ、もっときちんと伊作を守れれば、それで」

苦笑しながら僕の顔についた泥を落とす彼はやっぱりどうしようもないほど格好よくて、僕は熱くなった頬を隠すように俯いた。