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【呪術】生存if直哉と現実からの逃避行

*生存if

生き延びてちょっと精神的におかしくなった狂人直哉くんと直哉くんの唯一にして最後の所有物である主人公の(主人公にとっては)ほのぼの逃避行生活。

基本的に覚醒真希ちゃんという死神から逃れるために荒れた日本を転々と移動してるんだけどたまに「牛タン食べたい」とか「カニ食べたい」とかいってグルメ紀行に走りだす。
政府は機能してないし経済も動いてない殺伐とした世界で成り行きで人助けすることもあれば非術師を殺すこともある。倫理観は二人ともどっこいどっこいなのでなにやっても止める人はいない。
普段はちょっと不安定な部分が見え隠れする程度だけど主人公が視界からいなくなると途端に恐慌状態になる直哉と一緒にぶらぶら旅して美味しいもの食べて温泉に入ったりセックスしたりするだけのゆるい話。

***

「あいつら俺の大事なもん全部奪う気や。させてたまるか。ナマエは渡さん。絶対に奪わせへんぞ」

そう言って見た目だけはそれなりに回復した直哉は俺の手をとってどこへともなく大股で歩き始めた。
あいつらというのはおそらく禪院真希と伏黒恵のことだろう。
俺は禪院ではないのでお家騒動の詳しい事情なんてわからない。けれど前当主が伏黒恵を当主に指名し、直哉以外の禪院が真希の手で一人残らず殺されたというのは風の噂で耳にした。
少し前まで時期当主と目されていた直哉からすれば『奪われた』というのは正当な主張なんだと思う。
禪院の人間より使い勝手がいいからと拾われてそばに置かれていた性処理用の棒男。飽きたら捨てる道具だと言って憚らなかった俺を『大事なもの』にカウントしてしまうほど何もかもを失った直哉は、まあ別に憐れというほど同情心を持てる相手でもなかったが、それでもなんだかしみじみとしてしまって俺はその手を振り払わず履きかけの靴の踵を踏み潰しながら小走りで素直にあとをついていくことにした。
日本は終わりだ。海外だっていつどうなるかわかったもんじゃない。
どこに行ったって地獄なら、こいつの隣でもいいだろう。

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