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【FGO】カルデアのモブスタッフと英雄譚イアソン様

*死ネタ

まだ幼いころに初めて自力で読んだ分厚い本がアルゴノーツの冒険譚でイアソンのことはクズだなって思ってるけどそれはそれとして相当な思い入れと憧れを抱いてるカルデアスタッフ主人公が召喚されたイアソンにキラキラと目を輝かせて懐く話。
イアソンも満更じゃないから勧められるまま酔いもしない酒を飲んで冒険の話(9割自慢)を語ってやったりして交友を深めていく。
オケアノスでのことは聞くな。思い出したくもない。
とはいえアルゴノーツ時代の話にも限りはある。ので、そのうち語ることが尽きたらイアソン自ら「おい、たまにはついていってやってもいいぞ。ただしヘラクレスも連れていけよ。あと前線には出すな絶対にだ!!」ってマスターに迫るようになる。
イアソン様はスタッフくんの英雄でありたい。


***

イアソンは尊大で小物で魂の捩くれ曲がったクズだけど「この服のここすごいえろいですよね」って内腿さわっとしたら「ひゃん!?」ってくっそかわいい声だしてくれる。そしてスタッフくんはイアソンが自分に甘いことを理解した上で積極的にだいぶギリギリなセクハラをする。
思い入れも憧れもあるしクズくても英雄だってことは理解してるけどそれはそれとしてからかいがいがあって愉快。
(サーヴァントである彼にそれ以上の感情は持つべきではない)(失礼なようでいて分は弁えているスタッフくん)

***

そんなスタッフくんは第2部冒頭で死ぬ。
只人が許される限界まで距離を縮めた英霊はすでに退去済み。
一人きり、誰を守ることも誰かに守られることもなく、ろくな抵抗の一つもできずにあっけなく心臓は動きを止めた。
恐怖はもちろんあったけれどどこかで納得していた。だって自分は英雄じゃない。ただ少し変わった人生を歩んだだけの一般人だ。こういう、後世に伝わらない、無意味な終わりのほうがしっくりくる。
ああ、でも、それなら。と酸素の供給されなくなった脳で最後に想う。
こんなにあっけなく死ぬのなら。
いい子ぶって弁えたりせず。
半端に交流を持ったりせず。もっと。
もっとーーー

***

この話のアトランティスイアソン様はオケアノスでのことはもちろんオケアノス後に召喚されてカルデアで過ごした期間があることも全部覚えてる。
友を思って飲む酒に友というには少し違う男の顔が出てくることも多くあった。カルデア一行の中にいないその男が、白紙化に伴い死んでしまったであろうことも知っていた。
ポセイドンを撃破してケイローンも消えたあと、イアソンは「あいつに話してやる冒険が増えたな。ヘラクレスのいないオレの冒険だ!」と泣きそうな声で呟いて独り満足げに笑う。
聞かせる相手はすでにいないし語り部たる自身ももうすぐ消える。あの人間は英霊にはなり得ない。記憶を持ったまま再度召喚されることがあったとしても二度と彼に会うことはない。全部わかっていて、それでも笑う。
誰に知られずとも確かに存在した英雄譚の最後は、誰にも知られずひっそりと死んだ男への想いで締められた。

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