×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

【OP】現パロサンジくんと食事事情クソ男

*現パロ

大学時代、知人以上恋人未満みたいな、友人とは違う、どう名前をつけていいかわからないむずがゆくなる関係の主人公の一人暮らしの部屋に初めて遊びに行ったら料理するために必要なあれこれがあまりにも足りてなくて「ありえねェ……!」と頭抱えた。
包丁もまな板も料理鋏もない。使えるのはインスタントの麺作るためにしか使われてない百均の鍋とヤカン。やけにきれいな炊飯器。あと電子レンジ。調味料は埃かぶった塩胡椒の小瓶だけだし近くのスーパーで買ってきた素材は手で引きちぎるしかない。
それでもどうにかこうにか食材を余らせたりしないよう配慮しつつ美味しい料理を完成させたら「毎日これが食べられたら幸せだろうなァ」とかいう馬鹿みたいなコメントをいただいて、それはどういう感情で言っててお前はおれのことどう思ってんだってイライラそわそわしたりした。甘酸っぱくて苦々しい青春の記憶。

***

結局サンジの性格や家庭環境からくる情緒の不安定さが災いして主人公とはそれ以上関係が発展することなくぷっつり縁が途切れしまったんだけど、サンジが大学卒業したあと料理人の道を進むために勉強しながらレストランで働いてたら近くの居酒屋で飲んで潰れたらしい主人公が道端に落ちてるのを見つけてしまって、呆れたことに学生の頃から引っ越してないっていうあのやっすいワンルームマンションまで届けてやることになってしまって。
男二人が並んで通るには狭い廊下、昔自分がプレゼントしたブランドものの財布の小銭入れから家の鍵を取り出して扉を開けて、玄関に放置して風邪でもひかれたら寝覚が悪いからって言い訳してベットに連れてくことにして。
その途中、あんなに何もなかった狭い台所に質のいい包丁やら大きさや深さの違う複数のフライパンやらごちゃごちゃした調味料やらがおいてあるのを横目で見た。見て、ああ、と理解してしまった。

***

とりあえずそれ以上考えないように思考を停止してベッドまで運んだ後(恋人がいるんだなそりゃそうかあれから何年も経ってんだいやそもそもあのときだって別におれらは付き合ってたとかそういうのじゃなかったし)ってぐるぐる自分を納得する言葉を巡らせて、そのあまりに当然な現実に打ちのめされて部屋と台所の間でしゃがみ込んで泣いちゃうサンジ。
と、無造作に降ろされたベッドの上から「台所のやつなァ、サンジにいろいろ作ってもらいたくて買ったのに、会えねェし。連絡もできねェし、でさ。結局一回も使ってねェの」ってへらへら重大事実を告げてくる酔っぱらい。
なんでそんなこと、いまさら。いまも、いまでも、まだ。

***

「…………お前、おれのことどう思ってんだよ」
「好きだと思ってるよ」

ずりずり這ってきて酒臭い口でしょっぱい唇を塞ぐ酔っぱらい。
そんな簡単に。馬鹿じゃねェの。

***

現パロサンジくんと主人公はこのあとキッチン重視の二人暮らしにはちょっと狭い部屋借りて住み始めるんだけど仕事やら日々の食事のことやらですれちがってサンジくんのメンタルがちょくちょくヘラッとするよ!
とはいえ一回ちゃんと言葉にして話しをしなかったなかったせいで離れてしまった経験のある二人だしお互いそのときよりちょっとは大人になってるのでそんなひどいことにはならない。
大好きで大切だからいつだってお前に喜んでほしいんだよってことを伝えられればこいつらの関係はいつまでもハッピー。

prevnext