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【呪術】能天気な元幼馴染と魂にいろいろ刻み込まれてる夏油傑の輪廻転生物語

*死ネタからの転生

「呪術師の観点からしてさぁ、輪廻転生ってあると思う?」
「ないんじゃないかな。少なくとも私はそういう事例を見たことがないしね」
「ロマンのかけらもねぇな。そこはあるって言っとけよ」
「君に嘘はつきたくない」
じゃあもしもでいいや。もしもまた会えたら、次は大往生まで仲良くしような。

そう言って諦めたように笑って殺されることを受け入れた非術師の幼馴染みが前世のことまるっと全部憶えたまま平和な世界に生まれ変わってテレビのロケしてる人気お笑いコンビの片割れの夏油傑を見つけて輪廻転生あったじゃ〜ん!って声かけたら目があった瞬間恐慌状態に陥られて周りからヤバい目で見られる話。
殺されたうえに全部憶えてる俺がけろっとしてんのに記憶のないお前が前世の業でトラウマ背負ってんのなんだよ被害者面やめれ。
(好きな子殺した記憶のフラッシュバックでパニックになりこの日以降毎晩悪夢にうなされるようになる夏油くんとあっこれもう会わないほうがいい感じすかってフェードアウトしようとして泣きながら縋りつかれて対応に困る元幼馴染み)
(前世で大往生までって約束したもんね)

***

夏油はなんにも憶えてないし思い出せない。
この世界には呪力なんて存在しないから前世の話なんかされても頭おかしいスピリチュアル系の人だとしか思えないんだけどそうやって一蹴するにはあまりにも感情がぐちゃぐちゃになりすぎた。罪悪感と恋情と恐怖と執着。どう考えても初対面の人間に抱く想いの質量じゃない。
とにかく逃したくなくて呼吸もままならない状態で縋りついたあとどうにかこうにかずるずると続いた関係に、いったいどういう名前をつければいいのやら。

***

そのうち夏油の様子がおかしいことに気づいた(前世の記憶はないけど経験値が引き継がれたのか多少精神的に成長してる)祓ったれ本舗五条悟が主人公の存在嗅ぎつけてちょっかいかけてくるものの「悟、悟。マジでやめろ」ってガチの顔した夏油がガードするので交友関係築くまでには至らなかった。
前世でも今世でも傑の親友やってるらしい悟君に興味がないわけではなかったけどちょっと喋っただけで「うわこいつ性格ヤバいな」ってわかるくらい煽られたから積極的に関わりたいとは思わない。傑よくアレと親友やってられるな。いや傑も結構性格アレだし問題ないのか。

***

「傑、お前ちゃんと寝れてる?テレビのときはメイクで誤魔化せてるけど実物全然盛れてねぇぞ」
「大丈、」
「というわけで今回ご紹介するのはこちら!!夏油傑のトラウマの君抱き枕!!」
「どうも〜トラウマの君で〜す」
「…………は?」

積極的に関わりたくないとは思ったけど前世のことを考えたら自分の想像以上に思い詰めるタチだったらしい幼馴染みの悩みは風邪のひきはじめに葛根湯飲むような感じで悩み始めにさっさとどうにかするべきなんだろうだし、たぶん俺一人で解決しようとするよりかは親友の悟君巻き込んだほうが手っ取り早い。
そう思って傑の目を盗んで悟君に接触して事情を説明した結果がこのサプライズだ。毎晩俺を殺したときの前世の記憶を夢に見てるっぽい傑に活きのいい俺の抱き枕をプレゼント。大人の男二人がそこそこ真面目に考えたとは思えない実に馬鹿げた企画である。笑えよ。

「夜目が覚めたとき俺が寝てたら死体だと思って余計パニックになるかもしれんからちゃんと有給とって昼夜逆転生活に備えてきたぜ……これはイベント周回が捗るな……!」
「抱、は、正気か?ありえない、そんな、なにかあったらどうする気だ!?」
「また俺が死体になるとか?ないない、いまの傑は俺のこと殺せないだろ」
「死ぬのは私だよ馬鹿!!」

***

好きな人を手にかける夢を見た直後すぐ隣で好きな人と目があったら?大丈夫かと覗き込まれて汗ばんだ額にかかった髪を払われたら?
夢との落差できっと泣く。なにを口走るかわからないし心臓を動かしていられる自信がない。
なんだこれは。前世とやらの仕返しか。合法的に私を殺そうとでもしているのかこいつは。

***

元幼馴染みは夏油からのクソ重矢印にまったく気づいていないのでそんな事実は一切ない。
でも能天気なアホだしなんだかんだ律儀な男だから既成事実作ってそれを盾に迫れば夏油の望む形で一緒に大往生してくれるものと思われる。がんばれ。

***

・主人公
ただの能天気。特に目標も将来のビジョンもなくふわっと生きてたので死にたくはなかったけど傑が人を殺すってことはそれなりの何かがあったんだろうと察して、自分よりずっと賢くてしっかりしたこの幼馴染みがそこまで思い詰めて行動するならしかたないと自分の命を笑って諦めた。
物事を深く考えない性質のおかげか死を経験してもSAN値が驚くほど減ってない。

・夏油
恨んで罵ってほしくて殺す前に話す時間をつくったのに逆に受け入れられてしまったせいで最悪の呪いに囚われた。猿は嫌いだとどれだけ自分に言い聞かせても嫌えない人がいた。
転生後は前世の記憶もなく呪術や呪霊のいない世界でただの一般人として生きてきたのでメンタルが鍛えられておらず主人公と再会した際のフラッシュバックに耐えられなかった。軽く病んでる。

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