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【呪術】同級生に甘えたくてじりじりする夏油傑

東京に珍しく積もるほどの雪が降った冬のある日、悟も硝子もいない朝の教室で◯とキスをした。
意図したものではなかった。
寒さに背中を丸めながら教室に入ったらすでに着席していた◯が手招きをしきて、近寄って隣に立ったらかがめと指示されて、それも言われた通りにしたら温かい手で耳と頬を包み込まれて、耳が真っ赤で痛そうだと、カイロで温めていたからぬくいだろうと言われて気がついたら笑みを浮かべるその唇にキスをしていた。
したのは間違いなく自分からだったが本当に誓って意図したものではなかったのだ。

「なに、甘えたい気分?」

自分の行動の意味がわからなくて混乱で固まった傑に◯は気にした様子もなく再び笑いかけるとがばりと傑の頭を抱きかかえた。よしよしと大型犬にでもするように髪を乱されついでに背中を勢いよく擦られて摩擦熱で温められる。
屈んだまま無理な体勢をとらされて腰と首が痛かったが顔を見られずに済んだのは心の底からありがたかった。

***

これまで寄りかかられる側としてそれが当たり前で生きてきた夏油がこれまた当然のように甘やかしてくれる存在にぶち当たって衝撃を受けるとともに甘えたい欲がむくむく湧き出てくるんだけどキスを甘えの表現として受け入れるやつ相手にどう甘えればいいのか距離感がまったくわからなくてじりじりする話。

***

またキスしてもいいんだろうか。いや違う。おかしい。キスはそういうものじゃない。甘えるにしても他に方法があるはずだ。そもそもなんであのとき自分は◯にキスなんてしたんだろう。どうして◯はキスされてあんな簡単に受け入れてしまえるんだろう。自分以外がキスしても、◯は。
考えれば考えるほど熟れすぎたトマトを指でつついたみたいに心臓がじゅくじゅくと腐れていく気がして、傑はあの朝を一人で再現するように頭を抱え髪を掻き乱した。

***

主人公は夏油に恋愛的な意味でまったく期待してないので「さすがモテる男はスキンシップのハードルが低いな〜役得役得」くらいに思ってる。
好きな人と触れ合えたらそれで幸せ。無欲で怠惰な男。

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